空豆を人買ひをれば我も買ふ 森賀まり
スーパーの店先に数人が頭を寄せ合っているのが目に入った。大箱の中に空豆がどっさり入っていて、空豆の「詰め放題」だという。どれだけ多く入れようと一袋の値段は変わらないのだ。皆嬉しそうに袋に空豆を詰めている。私も即参加。所定の袋をもらい、空豆を袋に詰め始めた。厚みのある空豆の大きな莢は、意外とかさばり、思うほど沢山は入らない。周りを見ると、莢の向きを揃え、ぎっしりと見事に詰めている名人がいた。早速真似る。袋にぱんぱんに詰め、大よろこびで帰ったことを思い出す。
掲句、「人買ひをれば・我も買ふ」のおおらかさ、買ったものが「そらまめ」というのがとても楽しい。新緑のころのさわやかな風と、空豆のきれいな色彩が浮かぶ。莢を剥くと豆は、一個づつふかふかの白い綿に守られ、さみどり色に光っている。その豆の形、豆の味。その予定外の買い物は、幸福感に満たされている気がする。
〈句集『しみづあたたかをふくむ』(2022年/ふらんす堂)所収〉