およそ日刊「俳句新空間」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
2024年10月23日水曜日
DAZZLEHAIKU79[桑原三郎] 渡邉美保
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草虱妹の手の邪険なる 桑原三郎 「草虱」は、夏に白い小さな花をつけ、秋になると棘上の堅い毛が密生した実を結ぶ。この実が道行く人の衣服や動物につき、くっつくと取りにくいので藪虱あるいは草虱と呼ばれるという。 草虱を衣服にいっぱいつけて帰ってきた兄と、出迎えた妹と...
2024年9月2日月曜日
DAZZLEHAIKU78[広渡敬雄] 渡邉美保
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かさぶたのいつしか剥がれ夜の秋 広渡敬雄 「かさぶた」についての情報はなにも語られていないのだけれど、かさぶたが出来、それが乾ききって剥がれるまでの鬱陶しさはよくわかる。かさぶたは周囲から徐々に乾いていくと、つい、乾いた部分をはがしたくなる。かさぶたを少しずつ剥...
2024年7月31日水曜日
DAZZLEHAIKU77[和田悟朗] 渡邉美保
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みみず地に乾きゆくとき水の記憶 和田悟朗 真夏の灼けたコンクリートの上で干乾びたみみずを見かけることがある。完全に乾ききって黒ずんでしまったみみずもいれば、半身は干乾びつつも残りの半身はまだ生々しい皮膚のままのみみずもいる。そんな時は、水分をたっぷり含んだ柔らかい土...
2024年4月10日水曜日
DAZZLEHAIKU76[土井探花] 渡邉美保
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花の陰ぼくはゆつくり退化する 土井探花 桜は美しく咲き満ちているのだけれど、樹下はうっすらと影を帯び、蒼ざめていたり、灰色だったりする。花の間から透かし見る空もまた薄青い。人影のまばらな静かな花の陰に坐る、あるいは横たわる。目を瞑る。桜の持つ神秘的な力を浴びながら...
2024年2月27日火曜日
DAZZLEHAIKU75[柴田多鶴子] 渡邉美保
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春を待つ赤肌さらすバクチの木 柴田多鶴子 「これ、バクチの木よ」と教えてもらい驚いたことがある。目の前の高木は、誰かが無理やり樹皮を剥がしたかのように、赤黄色の木肌がむき出しになっている。灰褐色の樹皮は、たえず自然にはがれ落ちるのだという。樹皮あっての幹ではな...
2024年1月23日火曜日
DAZZLEHAIKU74[久保田万太郎] 渡邉美保
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冬の虹湖の底へと退りけり 久保田万太郎 冬の雨のあがった後の空に、思いがけずにかかる虹にはっとすることがある。冬の淡い日ざしにうっすらとかかる虹は、やさしく儚げで、いつまでも心に残る美しさがある。 掲句、前書きに[昭和35年12月1日、その地にくはしき山田抄太郎君に...
2023年10月28日土曜日
DAZZLEHAIKU73[杉山久子] 渡邉美保
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こつとんと月見の舟のすれちがふ 杉山久子 「こつとん」のかそけき音のみが聞こえる。そのあとおとずれる何とも言えぬ静寂な空気。ここは一体どこなのか。 すれ違う月見の舟には誰が乗っているのだろうか。 「月見の舟」という言葉から、中秋の名月か、あるいはその前後。都塵を離れた静かな湖...
2023年8月26日土曜日
DAZZLEHAIKU72[鈴木六林男] 渡邉美保
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海底に未還の者ら八月は 鈴木六林男 「お尋ね申します。トラック島はこっちの方角でしょうか」 小説『姉の島』(村田喜代子著)の一節に、軍服を着た若き幽霊が、海底でアワビ採りをしている海女に、話しかけてきたという場面がある。 「・・・トラック島は日本海軍の基地じゃった。戦後、...
2023年7月26日水曜日
DAZZLEHAIKU71[三好つや子] 渡邉美保
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私を旅する水よ合歓の花 三好つや子 私たちの体のおよそ70%は水でできているそうだ。そして、その水は動いている。絶え間なく流れている。この流れこそが命を支えているという。その水が、まさしく「私を旅する水」なのだろう。 暑い中を帰り来て、よく冷えた一杯の水を飲む。水は...
2023年6月27日火曜日
DAZZLEHAIKU70[山西雅子] 渡邉美保
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水筒の中にゆふやけ子は育つ 山西雅子 夕焼けをたっぷり浴びて帰ってきた子が目に浮かぶ。真っ黒に日焼けした野球少年かもしれない。帰宅した子に手渡される空っぽの水筒。少年のお供の水筒もまた、夕焼けをたっぷり浴びてきたのだ。水筒の中にはまだ夕焼けが詰まっている気配。子供たち...
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