およそ日刊「俳句新空間」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
2023年10月28日土曜日
DAZZLEHAIKU73[杉山久子] 渡邉美保
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こつとんと月見の舟のすれちがふ 杉山久子 「こつとん」のかそけき音のみが聞こえる。そのあとおとずれる何とも言えぬ静寂な空気。ここは一体どこなのか。 すれ違う月見の舟には誰が乗っているのだろうか。 「月見の舟」という言葉から、中秋の名月か、あるいはその前後。都塵を離れた静かな湖...
2023年8月26日土曜日
DAZZLEHAIKU72[鈴木六林男] 渡邉美保
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海底に未還の者ら八月は 鈴木六林男 「お尋ね申します。トラック島はこっちの方角でしょうか」 小説『姉の島』(村田喜代子著)の一節に、軍服を着た若き幽霊が、海底でアワビ採りをしている海女に、話しかけてきたという場面がある。 「・・・トラック島は日本海軍の基地じゃった。戦後、...
2023年7月26日水曜日
DAZZLEHAIKU71[三好つや子] 渡邉美保
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私を旅する水よ合歓の花 三好つや子 私たちの体のおよそ70%は水でできているそうだ。そして、その水は動いている。絶え間なく流れている。この流れこそが命を支えているという。その水が、まさしく「私を旅する水」なのだろう。 暑い中を帰り来て、よく冷えた一杯の水を飲む。水は...
2023年6月27日火曜日
DAZZLEHAIKU70[山西雅子] 渡邉美保
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水筒の中にゆふやけ子は育つ 山西雅子 夕焼けをたっぷり浴びて帰ってきた子が目に浮かぶ。真っ黒に日焼けした野球少年かもしれない。帰宅した子に手渡される空っぽの水筒。少年のお供の水筒もまた、夕焼けをたっぷり浴びてきたのだ。水筒の中にはまだ夕焼けが詰まっている気配。子供たち...
2023年4月21日金曜日
DAZZLEHAIKU69[森賀まり] 渡邉美保
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空豆を人買ひをれば我も買ふ 森賀まり スーパーの店先に数人が頭を寄せ合っているのが目に入った。大箱の中に空豆がどっさり入っていて、空豆の「詰め放題」だという。どれだけ多く入れようと一袋の値段は変わらないのだ。皆嬉しそうに袋に空豆を詰めている。私も即参加。所定の袋をもらい、...
2023年2月23日木曜日
DAZZLEHAIKU68[小林成子] 渡邉美保
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羽ばたくも潜るも一羽風光る 小林成子 いつも通る散歩コースに小さな川がある。きれいに整備された川ではないので、岸辺には破けたビニール袋やごみ類が溜まっていたりする。川底も決してきれいとは言えない状態なのだけれど、川には、青鷺や白鷺がときおり飛んできて漁をする。いつも見...
2023年1月16日月曜日
DAZZLEHAIKU67[加藤楸邨] 渡邉美保
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その冬木誰も 瞶 ( みつ ) めては去りぬ 加藤楸邨 「その冬木」のことは一切描写されていないのだけれど、読者には読者なりの「その冬木」が目に浮かぶ。 寒空の下、木はすっかり葉を落とし冬らしい姿になっている。木の瘤も顕わになったその冬木は、平然と空に向かって立っ...
2022年11月18日金曜日
DAZZLEHAIKU66[松王かをり] 渡邉美保
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秋の浜海は巻かれて貝の中 松王かをり 夏の間、海水浴などで賑わった浜辺も、秋風が吹くころになると、人影も少なくなり、寂しい浜辺になる。目の前に広がる砂浜の少し遠くに、澄んで爽やかな海が光っている。引き潮の刻である。満ち潮の刻の水量豊かな海は、「巻かれて貝の中」という把握...
2022年9月12日月曜日
DAZZLEHAIKU65[花谷 清] 渡邉美保
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九月が好き崩れる雲が速いから 花谷 清 九月に入っても、まだ暑い日が続くなか、見上げる空は、青空半分、雲半分の空模様。青を背景に白くモコモコした雲が浮かんでいる。一方で、うすい雲が、真綿を引くように徐々に広がっていく。 暑気、涼気の行き合う空には、夏の雲と秋の雲が混在し...
2022年7月25日月曜日
DAZZLEHAIKU64[白石正人] 渡邉美保
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空蟬の覗きをりたる淵瀬かな 白石正人 空蟬は蟬のぬけがら。また、魂が抜けた虚脱状態の身という意味もある。からっぽの蟬の抜け殻には、ちゃんと目の跡が残っている。淵瀬は淀みと流れ。世の無常をたとえる語でもある。 コンクリートの壁に蟬の抜け殻がしがみついている光景はよく見るの...
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