およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2015年10月29日木曜日

人外句境 24 [林望] / 佐藤りえ

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回送電車軽々と行く秋の夜半  林望 すべての乗客が降りた後、車庫にしまわれるべく「回送」の表示を掲げ、ホームを出て行く電車。さっきまでのすし詰めが嘘のように、向こう側の座席や窓がよく見える、がらんと見通しのいい車両はいかにも軽そうだ。 「軽々と」の措辞が、ほんとうに軽...
2015年10月24日土曜日

黄金をたたく25  [宮崎斗士]  / 北川美美

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スプーン並べる間隔いつのまにか秋 宮崎斗士 英語のスプーン(spoon)はオランダ語(spaaon)、ドイツ語(span)と同じく木の切れ端、もしくは木の裂いたものという意味が語源だそうだ。ちなみにフランス語のスプーンにあたるものは、キュイエール(cuiller)で、...
2015年10月22日木曜日

人外句境 23 [車谷長吉] / 佐藤りえ

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草餅を邪神に供へ杵洗ふ  車谷長吉 邪神に草餅を供える。どのようなよこしまな神かわからないが、供えるものとして草餅、はどこか素朴で愛らしい。真摯な願いなら白い餅でよいのではないか。悪鬼が相手なら生贄として生き物やら生血やらが喜ばれそうなものでもある。 しかもその餅は杵...
2015年10月16日金曜日

黄金をたたく24  [飯田冬眞]  / 北川美美

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時効なき父の昭和よ凍てし鶴  飯田冬眞 作者の父上にとっての「昭和」、それも「時効がない」。無期限の探し物あるいは喪失感、何か背負っているものが終らない気配がある。昭和を生きた父上の世代。おそらく戦前のお生まれで戦中、戦後を生き抜いてこられた世代だろう。何があっても身...
2015年10月15日木曜日

人外句境 22 [対馬康子] / 佐藤りえ

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国の名は大白鳥と答えけり  対馬康子 ひとつめに浮かんだ情景。 空港の入国審査場で、パスポートをみせながら質問に答えている。ふつう、出身国を問われることはないと思うが、なにかを聞き間違え「ハイ、大白鳥からきました」ときっぱり答えるひとり。入国審査官の目に、おびえとも...
2015年10月14日水曜日

目はまるで手のように言葉に触れる 23[中村草田男]/ 依光陽子

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秋の航一大紺円盤の中 中村草田男 印度洋を航行して居る時もときどき頭をもたげて来るのは    秋の航一大紺円盤の中  草田男   といふ句でありました 虚子    (中村草田男『長子』序) 句集『長子』に寄せられた高濱虚子の序文だ。印度洋航行と...
2015年10月9日金曜日

黄金をたたく23 [杉山久子]  / 北川美美

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秋天やポテトチップス涙味  杉山久子 ポテトチップスは身近な乾き物(といってよいのか)である、口淋しいときにポテトチップスが小腹を満たしてくれる。こだわりのある作者であれば、ポテトチップスの新作味は相当試されているのではないかとすら想像できる。男梅味、夏塩風味、BBQ、...
2015年10月8日木曜日

人外句境 21 [和田誠] / 佐藤りえ

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人形も腹話術師も春の風邪  和田誠 腹話術師の男が手にした人形に語りかけている。どうしたんだい、きみ、何やら声が風邪っぽいじゃないか。そういうあんたこそ、鼻がつまっているんじゃないか。 簡単にいってしまえば、あたりまえのことである。腹話術師が風邪っぴきだから、人形の...
2015年10月5日月曜日

またたくきざはし4  [大井恒行] / 竹岡一郎

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夕べ泪朝歓声のナミアゲハ     大井恒行 一読、「朝に紅顔夕べに白骨」を思わせる。和漢朗詠集によっても蓮如上人の白骨の御文章によっても有名であり、平家物語の冒頭、「祇園精舎の鐘の音」にも通じる。 掲句が平家を連想させるのは、ナミアゲハにもよる。平家の一般的な...
2015年9月28日月曜日

処女林をめぐる 8 [古沢太穂]  / 大塚凱

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飛雪のホーム軍手という語なお生きいる  古沢太穂 軍手はそもそも戦時中に海軍が使用していたものであった、と聞いたことがある。もはや我々には「聞いたことがある」と伝聞的に述べる他にないことが切ないが、太穂は既に前の戦争を経て「軍手」という言葉が残った''あはれ...
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