およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2016年8月30日火曜日

フシギな短詩36[吉田類]/柳本々々

›
  盃に不動如山(うごかざるやま)夏の夢  吉田類 『吉田類の酒場放浪記』という番組では、首都圏を中心に「酒場詩人」の吉田類さんが居酒屋を巡り歩くのだが、私はたびたびこの番組の構成が気になっていた。 それは番組の終わりに必ず類さんが一句詠んで立ち去ることである。...
2016年8月26日金曜日

フシギな短詩35[中家菜津子]/柳本々々

›
  フェルナンド・ペソアの顔を連れ歩く 明日はきっとひどいどしゃぶり     中家菜津子 どうして語り手は「ペソアの顔」を「連れ歩」いたんだろう。この問いかけから始めてみよう。 ポルトガルの詩人フェルナンド・ペソアには数々の異名があった。ベルナルド・ソアレスやア...
2016年8月23日火曜日

フシギな短詩34[外山一機]/柳本々々

›
   ここは ゆうきをためされる しんでんじゃ。 たとえひとりでも たたかうゆうきが おまえにはあるか?   二十日鼠が五升樽さげて   年もとらぬに   嫁をとる           外山一機 外山一機さんに「 捜龍譚(どらごんくえすと)純情編 」という作品がある...
2016年8月19日金曜日

フシギな短詩33[川合大祐]/柳本々々

›
  二億年後の夕焼けに立つのび太  川合大祐 こんな問いから始めてみたい。野比のび太。かれはほんとうは《誰》なんだろう。どこの《時間軸》に住んでいる人間なんだろう。 のび太はドラえもんからたえず未来を喚起させながらも、ずっと現在の時間軸に留まりつづけている。毎日0点...
2016年8月16日火曜日

フシギな短詩32[車谷長吉]/柳本々々

›
  夏帽子頭の中に崖ありて  車谷長吉 小説家の車谷長吉と詩人の高橋順子の結婚生活をラジオドラマ化したFMシアター『時の雨』(NHKFM、1999年4月3日)にこんなシーンがある。車谷と高橋が二人だけの句会を行うのだが、「崖」を席題にして詠む。高橋はこんな句をつくる。...
2016年8月12日金曜日

フシギな短詩31[飯島章友]/柳本々々

›
  コンビニの冷蔵棚の奥の巨眼  飯島章友 自身の〈恐い川柳〉ばかりを集めた小冊子『恐句』には著者である飯島さん自身のこんな言葉が記されている。引用してみよう。   既発表作品の中から恐ろしげな川柳を選び出し、   今では珍しくなった活版印刷で刷り上げま...
2016年8月9日火曜日

フシギな短詩30[田島健一]/柳本々々

›
  噴水の奥見つめ奥だらけになる  田島健一 ずっと、田島健一さんの俳句をフシギだなあと思っていた。《どう》理解すればいいんだろうと。今回はこの問いからはじめてみたい。 ここでひとつ大きな補助線を引こう。   ひらく雛菊だれのお使いか教えて  田島健一 ...
2016年8月5日金曜日

フシギな短詩29[柳谷あゆみ]/柳本々々

›
  シャイとかは問題ではない一晩中死なないマリオの前進を見た  柳谷あゆみ マリオとは任天堂のゲームのキャラクターである。以前からマリオが短詩において〈死生観〉をひっぱりだすキャラクターであることに興味をもっていた。この柳谷さんの歌でも「死なないマリオ」としてマリオと...
2016年8月2日火曜日

フシギな短詩28[飯田有子]/柳本々々

›
   たすけて枝毛姉さんたすけて西川毛布のタグたすけて夜中になで回す顔  飯田有子 この歌の〈格差〉に注意してみたい。私はこの歌の〈読解のしがたさ〉としかしそれでもさし迫って現れてくる〈切迫〉はこの歌に内在している〈格差〉にあるような気がするからだ。 まずこの歌の構...
2016年7月26日火曜日

フシギな短詩27[金原まさ子]/柳本々々

›
  やがて叫びだすつけ合わせの紫蘇  金原まさ子 紫蘇は夏の季語。掲句では、紫蘇がシャウトしている。なんでだろう。 いや、フシギではない。金原さんの句においてはモノがリミッターを解除していくことがたびたびあるのである。季語がその〈沸点〉を越えること。たとえば、 ...
‹
›
ホーム
ウェブ バージョンを表示
Powered by Blogger.