およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2018年8月31日金曜日

DAZZLEHAIKU26[花谷 清] 渡邉美保

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   朝かと問われ夜と答える水中花    花谷 清 不思議な一句だと思う。  水中花の飾られた部屋に、朝かと問う人がいる。夜だと答える人がいる。どういう場面設定を想起するかは読者にゆだねられている。 或いは…と別の解釈もできそうだ。 真夜中にふと眼覚め、朝かと思う刹那...

DAZZLEHAIKU25[友岡子郷] 渡邉美保

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   舟音を追うて舟音明易し    友岡子郷 眠れぬ夜を過ごしている耳に、舟音が届く。その舟音に続く舟音は、夜が明けていくのを気付かせる。舟は夜明けとともに沖へ向っていくのだろう。夏の夜明けは早い。次第に明るくなる空の色。新しい一日のはじまり。 穏やかに一定のリズムで進んで...
2018年6月19日火曜日

DAZZLEHAIKU24[市川薹子]渡邉美保

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    麦秋の水のせてゐる忘貝    市川薹子 浜辺を歩いているとき、二枚貝の片方が離れて一片ずつになった貝殻をよく見かける。それを「忘貝」というそうだ。離ればなれになった二枚貝の片方が、他の一片を忘れるという意の名称だという。また、ワスレガイという名の二枚貝もあるそうだ...
2018年5月22日火曜日

DAZZLEHAIKU23[山田佳乃]渡邉美保

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   潮風に錆びゆく村や仏桑花     山田佳乃      「潮風」「仏桑花(ハイビスカス)」という言葉から連想されるのは、真夏の明るい太陽を浴びた南国の海辺。  しかし、掲句には明るさや青春性といったプラスのイメージはなく、海辺の村のさびれた光景が目に浮かぶ。  潮...
2018年4月28日土曜日

DAZZLEHAIKU22[白石正人]渡邉美保

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ぎしぎしやひとり登れば皆登り   白石正人 本格的な登山というよりは、里山、野原や川辺を散策しているときだろうか。誰かが小高い所へ登り始めると、皆も登る。自由な散策なのだから後に続かなくてもいいのにと思うのだが、ついついつられて登る。  誰もがしそうな、ありふれた光景だ...
2018年3月21日水曜日

DAZZLEHAIKU21[長谷川耿人]渡邉美保

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   カンダタの糸が降りさう杭の蜷   長谷川耿人 [或る日のことでございます。御釋迦様は極樂の蓮池のふちを、獨りでぶらぶら御歩きになつていらつしやいました。]   こんな書き出しで始まる芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に登場するカンダタ(犍陀多)。 地獄の底で蠢いている犍陀...
2018年3月8日木曜日

DAZZLEHAIKU20[市川薹子]渡邉美保

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  人を呼ぶ手の中にあり蕗の薹  市川薹子 まだ風の冷たい早春の野山で、思いがけなく蕗の薹を発見。その嬉しさには格別のものがある。土中からもたげる萌黄色の花茎は、ふっくらと膨らみ、手に乗せると、自然界から贈られたお雛様の風情がある。待ちかねていた春の訪れを実感させてくれる。 ...
2018年2月19日月曜日

DAZZLEHAIKU19[岩淵喜代子]渡邉美保

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 飴舐めて影の裸木影の塔      岩淵喜代子  飴、裸木、塔からの連想で、吟行中の一齣を想像した。  散策に疲れ近くのベンチに腰を下ろす。飴を含み、口中にひろがる甘味にほっと一息をつく。冬空のもと、葉を落とした裸の木々は、枝枝とその蔭が重なり合い、美しい模様を描いている...
2018年1月26日金曜日

DAZZLEHAIKU18[山口昭男]渡邉美保

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   今をゆく大きな雲や年酒酌む  山口昭男 新しい年が巡ってきたことを寿ぐお酒、年酒を酌む景はさまざまだ。親族一同集まっての賑やかな年酒もあれば、少人数でしみじみ酌み交わす酒もある。 掲句では、年酒を酌む様子は一切述べられていないけれど、新年のめでたさや華やかさとは別...
2018年1月16日火曜日

DAZZLEHAIKU17[岩田由美]渡邉美保

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    くひちがふあり枯蓮とその影と    岩田由美 冬の日を浴びて、枯蓮は水面にそれぞれの影を落としている。枯れた蓮の茎や葉、朽ちた花托などが残骸のように残っている姿は痛々しいが、青空と枯蓮と、水面に映る影が織りなす造形は現代アートのような面白さがある。 掲句、そんな...
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