およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2018年12月3日月曜日

DAZZLEHAIKU29[山尾玉藻] 渡邉美保

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   ピラカンサそないに生つてどうすんねん  山尾玉藻 ピラカンサは、火のような真っ赤な実をつけて、枝には棘があるということから、中国では「火棘(かきょく)」というそうだ。 晩秋から初冬にかかる頃。山野や、人家の庭にピラカンサが赤い実をびっしりつけているのを見かける...
2018年10月30日火曜日

DAZZLEHAIKU28[金山桜子] 渡邉美保

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   魚の鰭虫の羽音に水澄めり    金山桜子   秋の長雨や、台風による出水からも日を経て、晴天が続き、朝夕の冷やかさを感じる頃。空気も澄み、川の水も、湖も沼も透明度を増し、水底まで見通せるくらい澄んでくる。 そんな水際に立ち、作者は水面を見つめたり、水の中を覗き込ん...
2018年9月28日金曜日

DAZZLEHAIKU27[内田 茂] 渡邉美保

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   夏萩や母の棺のひよいと浮く    内田 茂  涼やかな緑の葉蔭から紫紅色の花をのぞかせる夏萩の、控えめで細やかな美しさ、どことなくさびしげな風情が「母の棺」に情感をそえている。  「母逝く(享年八十九歳)」と前書きが付されている一句の、天寿を全うされたであろう母上...
2018年8月31日金曜日

DAZZLEHAIKU26[花谷 清] 渡邉美保

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   朝かと問われ夜と答える水中花    花谷 清 不思議な一句だと思う。  水中花の飾られた部屋に、朝かと問う人がいる。夜だと答える人がいる。どういう場面設定を想起するかは読者にゆだねられている。 或いは…と別の解釈もできそうだ。 真夜中にふと眼覚め、朝かと思う刹那...

DAZZLEHAIKU25[友岡子郷] 渡邉美保

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   舟音を追うて舟音明易し    友岡子郷 眠れぬ夜を過ごしている耳に、舟音が届く。その舟音に続く舟音は、夜が明けていくのを気付かせる。舟は夜明けとともに沖へ向っていくのだろう。夏の夜明けは早い。次第に明るくなる空の色。新しい一日のはじまり。 穏やかに一定のリズムで進んで...
2018年6月19日火曜日

DAZZLEHAIKU24[市川薹子]渡邉美保

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    麦秋の水のせてゐる忘貝    市川薹子 浜辺を歩いているとき、二枚貝の片方が離れて一片ずつになった貝殻をよく見かける。それを「忘貝」というそうだ。離ればなれになった二枚貝の片方が、他の一片を忘れるという意の名称だという。また、ワスレガイという名の二枚貝もあるそうだ...
2018年5月22日火曜日

DAZZLEHAIKU23[山田佳乃]渡邉美保

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   潮風に錆びゆく村や仏桑花     山田佳乃      「潮風」「仏桑花(ハイビスカス)」という言葉から連想されるのは、真夏の明るい太陽を浴びた南国の海辺。  しかし、掲句には明るさや青春性といったプラスのイメージはなく、海辺の村のさびれた光景が目に浮かぶ。  潮...
2018年4月28日土曜日

DAZZLEHAIKU22[白石正人]渡邉美保

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ぎしぎしやひとり登れば皆登り   白石正人 本格的な登山というよりは、里山、野原や川辺を散策しているときだろうか。誰かが小高い所へ登り始めると、皆も登る。自由な散策なのだから後に続かなくてもいいのにと思うのだが、ついついつられて登る。  誰もがしそうな、ありふれた光景だ...
2018年3月21日水曜日

DAZZLEHAIKU21[長谷川耿人]渡邉美保

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   カンダタの糸が降りさう杭の蜷   長谷川耿人 [或る日のことでございます。御釋迦様は極樂の蓮池のふちを、獨りでぶらぶら御歩きになつていらつしやいました。]   こんな書き出しで始まる芥川龍之介の『蜘蛛の糸』に登場するカンダタ(犍陀多)。 地獄の底で蠢いている犍陀...
2018年3月8日木曜日

DAZZLEHAIKU20[市川薹子]渡邉美保

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  人を呼ぶ手の中にあり蕗の薹  市川薹子 まだ風の冷たい早春の野山で、思いがけなく蕗の薹を発見。その嬉しさには格別のものがある。土中からもたげる萌黄色の花茎は、ふっくらと膨らみ、手に乗せると、自然界から贈られたお雛様の風情がある。待ちかねていた春の訪れを実感させてくれる。 ...
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