およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2019年7月25日木曜日

DAZZLEHAIKU36[栗林 浩]  渡邉美保

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  行く夏のからとむらひか沖に船     栗林 浩  「からとむらひ」という言葉にはっとする。  広辞苑に「空葬。死体の発見されない死人のために仮に行う葬式」とある。  「からとむらひ」から   〈屍なき漁夫の弔ひ冬鷗〉   平野卍   〈屍なき柩のすわる隙間風〉...
2019年7月1日月曜日

DAZZLEHAIKU35[榎本 亨]  渡邉美保

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   飛んでくる蠅に大らか烏賊を干す     榎本 亨  海辺の町の「烏賊を干す」というイメージは鮮やかだ。  ずらりと一列に干された烏賊の白い身が光り、その向こうに青い空と青い海が広がっている。潮風がときおり、干された烏賊を揺らす。  そこへ、匂いを嗅ぎつけてか、...
2019年5月17日金曜日

DAZZLEHAIKU34[市川薹子]  渡邉美保

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   戸袋の鳥の巣壊したる夕べ  市川薹子     近所に、いつも二階の雨戸が閉まっている家がある。その庭には大きな柿の木があり、小鳥たちの格好のたまり場になっている。  二階のベランダから、その木に来る小鳥を見るのが、楽しみでもある。春の終わり頃、雨戸の辺りがことに騒...
2019年4月9日火曜日

DAZZLEHAIKU33[福田鬼晶] 渡邉美保

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   放哉忌うみ凪げば凪ぐ寂しさも    福田鬼晶        尾崎放哉は、大正十五年(1926年)四月七日小豆島の庵で息を引取った。享年四十二歳。  四月初旬の頃の天候は、不安定である。  風が吹き、海が荒れている日もあれば、陽光が降りそそぐ、穏やかな日もある。 ...
2019年3月21日木曜日

DAZZLEHAIKU32[嵯峨根鈴子] 渡邉美保

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  もう人にもどれぬ春の葱畑     嵯峨根鈴子         葱畑で主人公は何になっていたのだろう。どうして人に戻れなくなったのだろう。葱畑で、主人公に何があったのか。  つぎつぎと疑問が膨らむ。  春の葱畑。そこは駘蕩として、葱も長けていることだろう...
2019年2月22日金曜日

DAZZLEHAIKU31[柘植史子] 渡邉美保

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   冴え返る紙のコップに水摑み     柘植史子         水の中に手を入れ、手のひらを思いっきり広げ、エイヤッと摑んでも水は逃げてしまう。当然のことながら水は摑めない。それでも水を摑みたいという願望がどこかにある。 掲句の「水摑み」に妙に納得させられた。紙のコッ...
2019年1月22日火曜日

DAZZLEHAIKU30[岡田一実] 渡邉美保

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  夜の森や濡れてマフラー置かれある  岡田一実         これは確かにどこかで〈見た〉景色です。    現実に、想念に〈見た〉景色です。 と「あとがき」にある。掲句を読むと、作者が〈見た〉景色を作者の眼を通して見ているような不思議な感覚になる。  夜という時間、...
2018年12月3日月曜日

DAZZLEHAIKU29[山尾玉藻] 渡邉美保

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   ピラカンサそないに生つてどうすんねん  山尾玉藻 ピラカンサは、火のような真っ赤な実をつけて、枝には棘があるということから、中国では「火棘(かきょく)」というそうだ。 晩秋から初冬にかかる頃。山野や、人家の庭にピラカンサが赤い実をびっしりつけているのを見かける...
2018年10月30日火曜日

DAZZLEHAIKU28[金山桜子] 渡邉美保

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   魚の鰭虫の羽音に水澄めり    金山桜子   秋の長雨や、台風による出水からも日を経て、晴天が続き、朝夕の冷やかさを感じる頃。空気も澄み、川の水も、湖も沼も透明度を増し、水底まで見通せるくらい澄んでくる。 そんな水際に立ち、作者は水面を見つめたり、水の中を覗き込ん...
2018年9月28日金曜日

DAZZLEHAIKU27[内田 茂] 渡邉美保

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   夏萩や母の棺のひよいと浮く    内田 茂  涼やかな緑の葉蔭から紫紅色の花をのぞかせる夏萩の、控えめで細やかな美しさ、どことなくさびしげな風情が「母の棺」に情感をそえている。  「母逝く(享年八十九歳)」と前書きが付されている一句の、天寿を全うされたであろう母上...
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