およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2019年12月1日日曜日

DAZZLEHAIKU40[大石悦子]  渡邉美保

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   草の実になるなら盗人萩がよい   大石悦子  11月初旬、田圃の畦道を抜け、里山を歩く。道すがら、いろいろな草が実を結んでいた。桜蓼、小蜜柑草、屁屎葛、鵯上戸、石美川、牛膝、そして盗人萩などなど。いずれもかわいらしい小さな実である。  これら草の実は、野趣に富み野山を...
2019年11月9日土曜日

DAZZLEHAIKU39[鈴木牛後]  渡邉美保

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   黄落や牛の尻追ふ牛の鼻   鈴木牛後  木々は黄葉し、地にも黄の落葉、真青な空を背景に黄葉の落葉が宙を舞う黄落期。秋の終りの黄の光にみちた空間には哀切さが漂う。 降りそそぐ黄色い光の中に放牧の牛のシルエットが浮かぶ…、そんな牧歌的な景を思い描こうとするとき、〈牛の尻...
2019年9月27日金曜日

DAZZLEHAIKU38[川島 葵]  渡邉美保

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冬瓜をどうするかまだ決められず       川島 葵  句会で冬瓜が話題に上った。「味がない」「歯ごたえがない」「あんまり美味しいもんじゃない」などとその場の男性諸氏の評判は芳しくなかった。「淡白な味は、出しによって引き立つし、翡翠煮など見た目も美しい」という擁護派もいて、...
2019年8月23日金曜日

DAZZLEHAIKU37[ふけとしこ]  渡邉美保

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ごきぶりの髭振る夜も明けにけり     ふけとしこ ごきぶりを見ると、反射的に臨戦態勢をとってしまうので、(たいていは逃げられてしまうのだが)「髭振る」ことに注目したことは、ほぼない。 確かにごきぶりには一対の髭がある。その髭は嗅覚、触覚などをつかさどり、食物を探したり、...
2019年7月25日木曜日

DAZZLEHAIKU36[栗林 浩]  渡邉美保

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  行く夏のからとむらひか沖に船     栗林 浩  「からとむらひ」という言葉にはっとする。  広辞苑に「空葬。死体の発見されない死人のために仮に行う葬式」とある。  「からとむらひ」から   〈屍なき漁夫の弔ひ冬鷗〉   平野卍   〈屍なき柩のすわる隙間風〉...
2019年7月1日月曜日

DAZZLEHAIKU35[榎本 亨]  渡邉美保

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   飛んでくる蠅に大らか烏賊を干す     榎本 亨  海辺の町の「烏賊を干す」というイメージは鮮やかだ。  ずらりと一列に干された烏賊の白い身が光り、その向こうに青い空と青い海が広がっている。潮風がときおり、干された烏賊を揺らす。  そこへ、匂いを嗅ぎつけてか、...
2019年5月17日金曜日

DAZZLEHAIKU34[市川薹子]  渡邉美保

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   戸袋の鳥の巣壊したる夕べ  市川薹子     近所に、いつも二階の雨戸が閉まっている家がある。その庭には大きな柿の木があり、小鳥たちの格好のたまり場になっている。  二階のベランダから、その木に来る小鳥を見るのが、楽しみでもある。春の終わり頃、雨戸の辺りがことに騒...
2019年4月9日火曜日

DAZZLEHAIKU33[福田鬼晶] 渡邉美保

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   放哉忌うみ凪げば凪ぐ寂しさも    福田鬼晶        尾崎放哉は、大正十五年(1926年)四月七日小豆島の庵で息を引取った。享年四十二歳。  四月初旬の頃の天候は、不安定である。  風が吹き、海が荒れている日もあれば、陽光が降りそそぐ、穏やかな日もある。 ...
2019年3月21日木曜日

DAZZLEHAIKU32[嵯峨根鈴子] 渡邉美保

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  もう人にもどれぬ春の葱畑     嵯峨根鈴子         葱畑で主人公は何になっていたのだろう。どうして人に戻れなくなったのだろう。葱畑で、主人公に何があったのか。  つぎつぎと疑問が膨らむ。  春の葱畑。そこは駘蕩として、葱も長けていることだろう...
2019年2月22日金曜日

DAZZLEHAIKU31[柘植史子] 渡邉美保

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   冴え返る紙のコップに水摑み     柘植史子         水の中に手を入れ、手のひらを思いっきり広げ、エイヤッと摑んでも水は逃げてしまう。当然のことながら水は摑めない。それでも水を摑みたいという願望がどこかにある。 掲句の「水摑み」に妙に納得させられた。紙のコッ...
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