およそ日刊「俳句新空間」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
2020年6月10日水曜日
DAZZLEHAIKU45[小島一慶] 渡邉美保
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夏めくや亀の子束子専門店 小島一慶 なにげないものに夏の気配を感じる一瞬がある。作者の眼に映ったのは亀の子束子専門店。 亀の子束子という地味で武骨な、昔ながらの台所用品を扱う専門店があり、夏めいている。そんな視点に惹かれる。 明るく瀟洒な店内に、並...
2020年4月2日木曜日
DAZZLEHAIKU44[大島雄作] 渡邉美保
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電球を振つてさりさり春の雪 大島雄作 電球をくるくる左に回し、ソケットから外す。外した電球を耳元で振る。替えの電球をくるくる右に回して取り付ける。よくある光景だった。 外した電球を耳元で振ると震えるようなかそけき音がした。白熱電球の中のフィラメントが切れ...
2020年2月29日土曜日
DAZZLEHAIKU43[辻 美奈子] 渡邉美保
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アボカドに種の重たき春の月 辻 美奈子 熱帯アメリカ原産のアボカドは、今や、年中スーパーに並ぶ人気の果実のひとつである。それ自体には季節感が乏しいと思っていたが、アボカドの種と春の月の取合わせの新鮮さに惹かれた。 アボカドの中央を縦に一周するように刃を入れ...
2020年2月6日木曜日
DAZZLEHAIKU42[千坂希妙] 渡邉美保
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日向ぼこ靴下脱いでふと嗅いで 千坂希妙 え~、嗅ぐの? と思わず笑ってしまう一句。 冬日にあたたまり、いい塩梅に身体も心もほっこりほぐれ、足先ももそもそと、つい靴下も脱いでしまう。靴下を脱いだときの開放感。その気持ち良さが伝わってくる。 そして...
2020年1月9日木曜日
DAZZLEHAIKU41[東金夢明] 渡邉美保
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身から出た錆も美し冬の釘 東金夢明 古い木造家屋の片隅で、壁に打ち付けられた一本の釘を思う。それ自体が無機質な、硬く細く冷たい釘であるが、長い年月の間に錆を纏う。錆を纏いつつ、冬の冷たい空気の中で、今、確固たる存在感を示している一本の釘。それを美しいと感じる作者がい...
2019年12月1日日曜日
DAZZLEHAIKU40[大石悦子] 渡邉美保
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草の実になるなら盗人萩がよい 大石悦子 11月初旬、田圃の畦道を抜け、里山を歩く。道すがら、いろいろな草が実を結んでいた。桜蓼、小蜜柑草、屁屎葛、鵯上戸、石美川、牛膝、そして盗人萩などなど。いずれもかわいらしい小さな実である。 これら草の実は、野趣に富み野山を...
2019年11月9日土曜日
DAZZLEHAIKU39[鈴木牛後] 渡邉美保
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黄落や牛の尻追ふ牛の鼻 鈴木牛後 木々は黄葉し、地にも黄の落葉、真青な空を背景に黄葉の落葉が宙を舞う黄落期。秋の終りの黄の光にみちた空間には哀切さが漂う。 降りそそぐ黄色い光の中に放牧の牛のシルエットが浮かぶ…、そんな牧歌的な景を思い描こうとするとき、〈牛の尻...
2019年9月27日金曜日
DAZZLEHAIKU38[川島 葵] 渡邉美保
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冬瓜をどうするかまだ決められず 川島 葵 句会で冬瓜が話題に上った。「味がない」「歯ごたえがない」「あんまり美味しいもんじゃない」などとその場の男性諸氏の評判は芳しくなかった。「淡白な味は、出しによって引き立つし、翡翠煮など見た目も美しい」という擁護派もいて、...
2019年8月23日金曜日
DAZZLEHAIKU37[ふけとしこ] 渡邉美保
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ごきぶりの髭振る夜も明けにけり ふけとしこ ごきぶりを見ると、反射的に臨戦態勢をとってしまうので、(たいていは逃げられてしまうのだが)「髭振る」ことに注目したことは、ほぼない。 確かにごきぶりには一対の髭がある。その髭は嗅覚、触覚などをつかさどり、食物を探したり、...
2019年7月25日木曜日
DAZZLEHAIKU36[栗林 浩] 渡邉美保
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行く夏のからとむらひか沖に船 栗林 浩 「からとむらひ」という言葉にはっとする。 広辞苑に「空葬。死体の発見されない死人のために仮に行う葬式」とある。 「からとむらひ」から 〈屍なき漁夫の弔ひ冬鷗〉 平野卍 〈屍なき柩のすわる隙間風〉...
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