およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2020年10月11日日曜日

DAZZLEHAIKU49 [高橋道子]  渡邉美保

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    こは夢と思ひつつ夢曼珠沙華    高橋道子      子どもの頃、田圃の畔に咲いていた彼岸花を摘んで花束にして家に持ち帰ったことがある。母に、すぐに捨ててくるようにとひどく叱られた。母の嫌いな花だつた。その頃は曼珠沙華という名前は知らなかった。 曼珠沙華は、秋の彼岸の頃、...
2020年8月28日金曜日

DAZZLEHAIKU48[仙田洋子]  渡邉美保

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    揚羽蝶派手な死装束だこと    仙田洋子     息絶えた揚羽蝶が道端に落ちているのを見ることがある。ありふれた夏蝶の死である。翅が破れていたり、埃っぽかったりしてはいても、どこか見過ごせないものがある。大振りで未だ光を帯びた翅の質感、黒地に鮮やかな黄や青の色彩。骸となっ...
2020年8月7日金曜日

DAZZLEHAIKU47[おおさわほてる]  渡邉美保

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     机拭く隅から隅まで夏野まで    おおさわほてる  乱雑に積み上げられた本やノートで、いつのまにか狭くなった机上をきちんと片づけた時の爽快感は格別だ。不用のものを取り除くと机は広々と して、自分自身のスペースを取り戻した気分になる。本、ノート、紙類を置きっぱなしにしてい...
2020年7月9日木曜日

DAZZLEHAIKU46[仙田洋子]  渡邉美保

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  死にくらげけらくけらくと漂へり    仙田洋子     クラゲが波間をゆらゆら漂っている。多くのクラゲは自力で泳いでいるのだけれど、なかには、すでに死んでいて、ただ、身体だけがゆらゆら浮いていることもあるだろう。波間を漂う姿には、のんきそうに見える時もあり、寄辺ない寂し...
2020年6月10日水曜日

DAZZLEHAIKU45[小島一慶]  渡邉美保

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    夏めくや亀の子束子専門店    小島一慶  なにげないものに夏の気配を感じる一瞬がある。作者の眼に映ったのは亀の子束子専門店。    亀の子束子という地味で武骨な、昔ながらの台所用品を扱う専門店があり、夏めいている。そんな視点に惹かれる。  明るく瀟洒な店内に、並...
2020年4月2日木曜日

DAZZLEHAIKU44[大島雄作]  渡邉美保

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   電球を振つてさりさり春の雪      大島雄作  電球をくるくる左に回し、ソケットから外す。外した電球を耳元で振る。替えの電球をくるくる右に回して取り付ける。よくある光景だった。 外した電球を耳元で振ると震えるようなかそけき音がした。白熱電球の中のフィラメントが切れ...
2020年2月29日土曜日

DAZZLEHAIKU43[辻 美奈子]  渡邉美保

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   アボカドに種の重たき春の月    辻 美奈子  熱帯アメリカ原産のアボカドは、今や、年中スーパーに並ぶ人気の果実のひとつである。それ自体には季節感が乏しいと思っていたが、アボカドの種と春の月の取合わせの新鮮さに惹かれた。  アボカドの中央を縦に一周するように刃を入れ...
2020年2月6日木曜日

DAZZLEHAIKU42[千坂希妙]  渡邉美保

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   日向ぼこ靴下脱いでふと嗅いで       千坂希妙   え~、嗅ぐの? と思わず笑ってしまう一句。  冬日にあたたまり、いい塩梅に身体も心もほっこりほぐれ、足先ももそもそと、つい靴下も脱いでしまう。靴下を脱いだときの開放感。その気持ち良さが伝わってくる。  そして...
2020年1月9日木曜日

DAZZLEHAIKU41[東金夢明]  渡邉美保

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   身から出た錆も美し冬の釘  東金夢明  古い木造家屋の片隅で、壁に打ち付けられた一本の釘を思う。それ自体が無機質な、硬く細く冷たい釘であるが、長い年月の間に錆を纏う。錆を纏いつつ、冬の冷たい空気の中で、今、確固たる存在感を示している一本の釘。それを美しいと感じる作者がい...
2019年12月1日日曜日

DAZZLEHAIKU40[大石悦子]  渡邉美保

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   草の実になるなら盗人萩がよい   大石悦子  11月初旬、田圃の畦道を抜け、里山を歩く。道すがら、いろいろな草が実を結んでいた。桜蓼、小蜜柑草、屁屎葛、鵯上戸、石美川、牛膝、そして盗人萩などなど。いずれもかわいらしい小さな実である。  これら草の実は、野趣に富み野山を...
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