たましひが人を着てゐる寒さかな 山田露結
着膨れの語感がひしひしと実感される季節になった。もっとも近年は薄手で保温・発熱する肌着の開発が進み、「冬でも薄着」なことに慣らされつつあるが。
掲句では着衣以前のたましいが人を着るほどに寒い、と告げられている。人を着る、ああそれなら、機能下着など及ばぬ暖かさだろう。厚化粧が過剰な顔の装いなら、人を着るのはいかほどの過剰さなのか。
むきみのたましいでいられぬ人の群れが往来を行き交う。人だと信じていたものが、その奥でふるえるたましいの着ぐるみなのかと思うと、ふいに寒さがいや増すような心地がした。
〈『ホームスイートホーム』2012年邑書林所収〉