いもうとに触れて壊れるしやぼん玉 松下カロ
春の温かい日差しのもと、庭でしゃぼん玉遊びに興じる幼い姉妹の、ほほえましい、そして懐かしい光景が目に浮かぶ。石鹸水に浸したストローを吹くと日の光を受けた美しい泡の玉が空中を浮遊する。姉が吹くしゃぼん玉に大はしゃぎの妹の愛らしい表情。妹はまだしゃぼん玉が上手に吹けないのかもしれない。
姉は大きなしゃぼん玉を作ろうと、息を深く吸い、慎重に少しずつ息を送り続ける。ふくらんできたしゃぼん玉は今までで一番大きく一番きれい。しゃぼん玉がストローを離れて空へ飛び出したと思った瞬間。あっ、しゃぼん玉は妹の肩先に触れて壊れた。
幼い妹のせいではないとわかっていても、それが〈いもうとに触れて壊れる〉の如何ともしがたい感情に、少し切なくなる。
日常のありふれた光景の一つであり、よくあることと見逃しがちな一齣だけれど、その一瞬の微視的なものをとらえる作者の精妙な感覚に惹かれる。
グリンピースひと粒だけの莢もあり 松下カロ
行先のなきこと愉し花筏
髪梳けばかたつむり樹を下りくる
〈『俳壇』4月号(2026年/本阿弥書店所収)〉