私を旅する水よ合歓の花 三好つや子
私たちの体のおよそ70%は水でできているそうだ。そして、その水は動いている。絶え間なく流れている。この流れこそが命を支えているという。その水が、まさしく「私を旅する水」なのだろう。
暑い中を帰り来て、よく冷えた一杯の水を飲む。水は私を旅しながら何処へいくのだろうか。絶え間なく流れる水は、私の体内を潤し、心を潤し、私の存在そのものを旅しているのかもしれない。絶え間なく流れる水は、内部から、外部へも移動するだろう。いつしか水は私になり、私は水になっている…そんな旅だと思う。
夏の夕暮れに咲く、淡い紅色の合歓の花。やわらかな風にゆれる合歓の花しべが、辺りの空気をゆらす。どこか濡れた感じの合歓の花にもまた、合歓の木を旅する水が流れているのだ。水は私と合歓の花を行き来する。
〈『現代俳句』7月号(2023年/現代俳句協会)所収〉