およそ日刊「俳句新空間」

-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保

2021年9月4日土曜日

DAZZLEHAIKU57[津川絵里子]  渡邉美保

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  暮れかかる空が蜻蛉の翅の中    津川絵里子  夕方、シオカラトンボが一匹、ツーとやって来て、自転車の荷台の上に留まった。すぐに飛んで行ってしまったが、透き通ったその翅は空の色をそのまま映していた。  〈とんぼの はねは そらの いろ そらまで とびたいからかしら 〉 (「と...
2021年8月5日木曜日

DAZZLEHAIKU56[石井清吾]  渡邉美保

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   リール巻く傍に青鷺従へて      石井清吾  釣りの一場面、〈リール巻く〉は竿にアタリがあり「きた、きた、きた」とばかりに、今しも魚を引き上げようとしている瞬間なのだろうか。傍に従えているのが〈青鷺〉というのがなんともユーモラスである。青鷺はたまたま近くにいただけで(従者...
2021年6月27日日曜日

DAZZLEHAIKU55[内田美紗]  渡邉美保

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   昼寝覚この世の水をラッパ飲み     内田美紗     昼寝覚めには、朝の目覚めとは違う、独特の感覚がつきまとう。   夏の暑さの中で、元気回復によいとされている昼寝であるが、二、三十分のつもりが一時間以上寝てしまい、妙にだるさが残ることがある。目覚めてしばらくはぼうっとし...
2021年5月28日金曜日

DAZZLEHAIKU54[川嶋一美]  渡邉美保

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 蛇が身を解くころあひ春の闇     川嶋一美     以前、冬眠中の蛇の巣穴を、掘り起こしたという人の話を聞いたことがある。仕事中の偶然の出来事だったそうだが、何匹もの蛇が縺れ合い、ひと固まりに丸まっていてギョッとしたという。掘り起こされた蛇たちにとってはいい迷惑だったに違いな...
2021年3月25日木曜日

DAZZLEHAIKU53 [岡田耕治]  渡邉美保

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  家中に草のびている朝寝かな    岡田耕治     「朝寝」は一年中することだけれど、春の朝の寝心地は格別。春の季語である。  この季節、一度目が覚めてから、またとろとろと眠る時間はどうしてあんなに心地よいのだろう。目覚時計のベルを止めてほんの数分と思っていたら、数十分過ぎて...
2021年2月16日火曜日

DAZZLEHAIKU52[北川美美]  渡邉美保

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  囀りの後の羽音と枝の揺れ    北川美美       庭の白梅が咲き始めると鳥たちがやって来る。チチチ、チュチュチュ…まだ冷たい朝の空気の中、鳥たちの羽音や鳴き声で目が覚める。 〈囀りと聞きとめしとき目覚めけり   林翔〉  その声を聞きながら、しばしまどろむ。早春の朝のたの...
2021年1月14日木曜日

DAZZLEHAIKU51[谷口智行]  渡邉美保

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  神ときに草をよそほふ冬の月    谷口智行       青白い冬の月が、透きとおる大気の中で輝いている。 透徹した空気のため刺すような寒さが感じらる月はさびしく、美しい。 そんな時、風や樹や山に宿る神々も、大地が恋しくなるのだろうか。そして 荒ぶる神々も、「ときに草をよそほふ...
2020年11月26日木曜日

DAZZLEHAIKU50[井越芳子]  渡邉美保

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  けふの日が野にゆきわたり冬の虫    井越芳子         歳時記によると、「冬の虫」の本意は「虫の声の盛んな秋と絶える冬との間の時期の鳴き声をいう」とある。  掲句から、小春日和の一日を思う。  小春の日差しが野にゆきわたり、地面も、触れてゆく木も草もあたたかい。  初...
2020年10月11日日曜日

DAZZLEHAIKU49 [高橋道子]  渡邉美保

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    こは夢と思ひつつ夢曼珠沙華    高橋道子      子どもの頃、田圃の畔に咲いていた彼岸花を摘んで花束にして家に持ち帰ったことがある。母に、すぐに捨ててくるようにとひどく叱られた。母の嫌いな花だつた。その頃は曼珠沙華という名前は知らなかった。 曼珠沙華は、秋の彼岸の頃、...
2020年8月28日金曜日

DAZZLEHAIKU48[仙田洋子]  渡邉美保

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    揚羽蝶派手な死装束だこと    仙田洋子     息絶えた揚羽蝶が道端に落ちているのを見ることがある。ありふれた夏蝶の死である。翅が破れていたり、埃っぽかったりしてはいても、どこか見過ごせないものがある。大振りで未だ光を帯びた翅の質感、黒地に鮮やかな黄や青の色彩。骸となっ...
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