2026年9月6日日曜日

DAZZLEHAIKU90[福田鬼晶 ]  渡邉美保

  夏痩せて腹話術師に抱かるる    福田鬼晶


 腹話術とは、一人で人形を遣いながら、唇・歯を動かさずに声を出し、あたかもその人形が話しているかのように見せかける術である。

  掲句を文字通りに受け取ると、夏痩せした人(あるいは子ども)が腹話術を生業としている人に抱かれているーただそれだけのことかもしれないのだけれど、それだけではすまない、不穏な雰囲気に包まれているような気がしてならない。

 夏痩せした子が腹話術師に抱かれ、膝に乗せられたとたん、その子は声も臓器もなくなり、腹話術師に操られる人形になってしまう。なぜか、そんなホラーがかった妄想が湧いてくる。不思議な、怖い俳句だと思う。


句集『クマムシ』より

鳥葬を頼まれてをり油照り   福田鬼晶

鱗粉の指のこされし春の昼

吊虻の虚空の昼を騒つかす

闇吐いてをりし狐の剃刀は

クマムシを飼うゆめ春の曙に

             〈句集『クマムシ』(2026年/ふらんす堂)所収)〉