夏痩せて腹話術師に抱かるる 福田鬼晶
腹話術とは、一人で人形を遣いながら、唇・歯を動かさずに声を出し、あたかもその人形が話しているかのように見せかける術である。
掲句を文字通りに受け取ると、夏痩せした人(あるいは子ども)が腹話術を生業としている人に抱かれているーただそれだけのことかもしれないのだけれど、それだけではすまない、不穏な雰囲気に包まれているような気がしてならない。
夏痩せした子が腹話術師に抱かれ、膝に乗せられたとたん、その子は声も臓器もなくなり、腹話術師に操られる人形になってしまう。なぜか、そんなホラーがかった妄想が湧いてくる。不思議な、怖い俳句だと思う。
句集『クマムシ』より
鳥葬を頼まれてをり油照り 福田鬼晶
鱗粉の指のこされし春の昼
吊虻の虚空の昼を騒つかす
闇吐いてをりし狐の剃刀は
クマムシを飼うゆめ春の曙に
〈句集『クマムシ』(2026年/ふらんす堂)所収)〉