ピラカンサそないに生つてどうすんねん 山尾玉藻
ピラカンサは、火のような真っ赤な実をつけて、枝には棘があるということから、中国では「火棘(かきょく)」というそうだ。
晩秋から初冬にかかる頃。山野や、人家の庭にピラカンサが赤い実をびっしりつけているのを見かけることがある。実は固まってつき、これでもか、これでもかと言わんばかりに混み合い、盛り上がっている。イクラのてんこ盛にも似ている。
真っ赤に輝く実は、美しくも禍々しくも思え、火棘の名が浮かぶ。
野鳥が次々飛んできて、実を啄んでいく。野鳥には嬉しいことだろう。
その過剰ともいえる生りようを見ていると、つい「そないに生って…」と言いたくなる。
掲句の、口語、しかも関西弁の呼びかけは、軽妙洒脱。弾むようなリズムが、楽しい。
この句を読んだ瞬間、どれほど沢山のピラカンサの実が生っているか、直に伝わってくる。そして笑える。
「どうすんねん」のざっくばらんな口調の中には、豊穣なる自然の恵みへの祝意も感じられる一句である。
〈句集『かはほり』(2006年/ふらんす堂)所収〉