掛け大根の白と白波の白。
一句の中では白い色のみが述べられているが、そこには澄み渡る青い空、遠く広がる青い海原、青を背景にして、白の際立つ光景が目に浮かぶ。冬の冷たい空気の中で、青と白の対比がとても美しく、清々しい。
最近はあまり見られなくなった掛け大根。高々と干された大根の真っ白な列が並ぶ風景は、郷愁を誘う。掛け大根は、寒風にさらすほど甘味が増し、美味しい沢庵ができるという。沢庵を漬けるということが珍しくなった現在、掛け大根の風景は、失われゆく生活の実景の一つだと思う。
掛け大根に視界が遮られているとき、白波を立てて進んでくる船は突如、掛け大根の間から現れる。いつもとは違う光景がユーモラスである。船の音、波の音も聞こえてくる。
〈句集『海の音』朔出版2017年所収〉