2018年4月28日土曜日

DAZZLEHAIKU22[白石正人]渡邉美保


ぎしぎしやひとり登れば皆登り   白石正人


本格的な登山というよりは、里山、野原や川辺を散策しているときだろうか。誰かが小高い所へ登り始めると、皆も登る。自由な散策なのだから後に続かなくてもいいのにと思うのだが、ついついつられて登る。 
誰もがしそうな、ありふれた光景だが「ぎしぎし」との取り合わせが、なんともおかしい。「ぎしぎし」の音も効果的だ。
ぎしぎし(羊蹄)は山野や道端、田畑の畔に自生する最も普通な雑草。昔からみられる草であり、現在も減る傾向にはないというから、頼もしい。都市近郊の汚れた河川のほとりや空地でもよく生育する雑草中の雑草。
しっかりと長い根を張り、丈夫な茎を持ち、堂々と生い茂っている「ぎしぎし」と「ひとり登れば皆登り」に見える人間の軽佻浮薄な一面と、どちらも好ましいのである。

〈句集『嘱』(2017年/ふらんす堂)所収〉