冬瓜をどうするかまだ決められず 川島 葵
句会で冬瓜が話題に上った。「味がない」「歯ごたえがない」「あんまり美味しいもんじゃない」などとその場の男性諸氏の評判は芳しくなかった。「淡白な味は、出しによって引き立つし、翡翠煮など見た目も美しい」という擁護派もいて、冬瓜は、好き嫌いの分かれる食べ物だと思う。
掲句、台所にごろんと置かれた大きな冬瓜が目に浮かぶ。
料理の目的があって買い求めたのではなく、思いがけない頂き物としての冬瓜なのだろう。
その冬瓜を前に、さてどうしたものかと思案中の作者。〈まだ決められず〉に作者の軽い困惑と逡巡が伺える。
スープ、煮付、あんかけなどの料理法はいくつか思い浮かぶが、決まらない。どうするか決まらないままに、数日が経ち…。〈まだ決められず〉である。放置された冬瓜の、のっぺらぼうの無聊を思うと、なんだか可笑しい。そして冬瓜に同情する。
〈句集『ささら水』(2018年/ふらんす堂)所収〉