およそ日刊「俳句新空間」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
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KriyaKenichi(仮屋賢一)
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2015年4月22日水曜日
貯金箱を割る日 27[辻本敬之] / 仮屋賢一
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湾岸に倉庫のごつた春霞 辻本敬之 そんなに言うほど湾岸に倉庫ってごった返していたっけ、倉庫って存外綺麗に並んで建てられているものじゃないかな、なんて思ってたら、春霞。遠くから見遣っているのか。なるほどなあ。 湾岸の倉庫なんて言われたら、ものすごく無機質な感じがす...
2015年4月16日木曜日
貯金箱を割る日 26 [下楠絵里] / 仮屋賢一
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宛先のはらひ大きく燕かな 下楠絵里 側(ソク)、勒(ロク)、努(ド)、趯(テキ)、策(サク)、掠(リャク)、啄(タク)、磔(タク)。「永字八法」である。それぞれ、点、横画、縦画、はね、右上がりの横画、左はらい、短い左はらい、右はらいで、この順番で「永」の字に現れる。...
2015年4月12日日曜日
貯金箱を割る日 25[古庄薫] / 仮屋賢一
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予約した鼓動と走る春一番 古庄薫 「予約」という言葉が、いちばん不思議。ふつうの生活だったら、「予約」は現実的で堅実な行動。でも、そんな卑近なイメージ、この作品中の「予約」には漂っていないんだよなあ。「予約」って言葉、他に何で見たっけな。 そうだ、「予約語」なん...
2015年4月4日土曜日
貯金箱を割る日 24[ひで] / 仮屋賢一
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点三つ並べれば顔万愚節 ひで 異なる3点が決まれば、平面が決定する。異なる3点が決まれば、円が決定する。異なる3点が決まれば、放物線が決定する。異なる3点が決まれば、顔が決定する。 ∵シミュラクラ現象 「決定する」は言い過ぎだが、確かに「∵」は顔に見える。一...
2015年3月31日火曜日
貯金箱を割る日 23[佐藤和香] / 仮屋賢一
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梅雨ごもり自画像の眼を描き直す 佐藤和香 自分の顔は他人の顔ではない。他人の顔という厖大な数の概念の中に埋もれることが出来ず、唯一無二の存在であることしか許されない、自分の顔。ときおり脳裡を過るその解けない呪縛は、ぞっとするような世界へ人を誘う。 自分で描いた...
2015年3月17日火曜日
貯金箱を割る日 22[福井蒼平] / 仮屋賢一
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紫陽花や読経の声の響きたり 福井蒼平 「紫陽花」と「読経」、か。なるほどな。 四枚の萼で出来た花びらのようなものがたくさん集まって、一朶の紫陽花。大抵の紫陽花は、その葉や茎などの緑の部分を除けば、単色の世界。にもかかわらず、なんだか奥深い世界観を持っているよう...
2015年3月11日水曜日
貯金箱を割る日 21 [阿部開晴] / 仮屋賢一
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春の坂余震の中を止まらずに 阿部開晴 年に一回のイベントは、その歴史を追うだけで当時の社会の様子が浮かび上がってくる、なんてことがあるから面白い。それは決してその当時の全部ではないけれども、真実の一端であることに疑う余地はない。 毎年夏に行われる、高校生のため...
2015年3月6日金曜日
貯金箱を割る日 20[一万尺] / 仮屋賢一
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討入を果して残る紙の雪 一万尺 小説の最後の一文を読み終えたとき、あちら側の世界に突如取り残されたかのような気分になって、不安というか、虚無感というか、そういった取り留めのない気持ちに襲われることがある。自分が良いと思える作品に出会えた時は大抵そうで、映画であっても...
2015年2月28日土曜日
貯金箱を割る日 19[一万尺] / 仮屋賢一
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水仙や小さき白と生きること 一万尺 十代目坂東三津五郎、俳号は一万尺。昨年のテレビドラマ『ルーズヴェルト・ゲーム』でお見かけしたのも最近のことに思えるし、2015年2月27日放送の『美の壺』(BSプレミアム)で放映されたインタビュー映像(2月7日収録)の様子を見ても...
2015年2月23日月曜日
貯金箱を割る日 18[和田誠] / 仮屋賢一
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春光や家なき人も物を干す 和田誠 物を干すという言葉には、極めて家庭的な響きがある。洗濯物を干すにしても、魚や野菜や果物を干すにしても、何にしても。 「家なき人」という言葉が堂々と中七にありながらも、読後感は非常に気持ち良い。そこにあるもの全てにいきいきとした...
2015年2月17日火曜日
貯金箱を割る日 17[和田誠] / 仮屋賢一
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司会者の慇懃無礼去年今年 和田誠 喋ることが仕事とはいえ、司会業を営む人たち皆が完璧な日本語を使いこなせているわけでもなく、そのキャラクターは人それぞれ。中には、なんにも間違っていないのだけれども、使う言葉にどうにも違和感を覚えるような人だっている。特に敬語なんかで...
2015年2月11日水曜日
貯金箱を割る日 16[和田誠] / 仮屋賢一
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人形も腹話術師も春の風邪 和田誠 腹話術を見たあと、自分でもできるんじゃないかと思ってしまう。で、真似してみたら全然できない。こういう経験、あるだろう。どれほどの超絶技巧であっても、凄いと思わせないのがプロの技なのだろうか。腹話術という芸は見ている人々ととっても近い...
2015年2月5日木曜日
貯金箱を割る日 15[夏目漱石] / 仮屋賢一
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初夢や金も拾はず死にもせず 夏目漱石 初夢だからといって、特別おめでたい夢を見るかといえばそうでもない。いつものように、訳の分からない夢だったり、現実と混同してしまうようなリアルな夢だったり、そもそも夢を見たかどうかすらあやふやだったり、そんなもの。でもそういう、日...
2015年1月30日金曜日
貯金箱を割る日 14[夏目漱石] / 仮屋賢一
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満堂の閻浮檀金や宵の春 夏目漱石 これほどまでにストレートな褒誉は読んでいて気持ちがよい。 英国留学中に高浜虚子に宛てた書簡に記された句で、「当地の芝居は中々立派に候。」とある。 会場内に満ち溢れる閻浮檀金(えんぶだごん)。仏教の経典中にみられる想像上の金...
2015年1月21日水曜日
貯金箱を割る日 13 [夏目漱石] / 仮屋賢一
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永き日や欠伸うつして別れ行く 夏目漱石 「じゃ、またあとで」とでもいうような気楽さで曲がり角を別々の方向へ行く二人。別れ際に欠伸するくらいだから、相当気の置けない仲なのだろう。その様子を見ていると、別れとはいえ大したことなさそうだし、こんな折々に悲しさなんて感じてい...
2015年1月15日木曜日
貯金箱を割る日 12 [尾池和夫] / 仮屋賢一
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トランプの王の顔して草を刈る 尾池和夫 トランプの王ほどぞんざいな扱いを受ける王はいない。二枚揃うと捨てられたり、マジシャンに寸々に破られたり。とにかく他のカードと同じように、敬われることなく扱われる。ダビデ王、カール大帝、カエサル、アレクサンドロス大王とそのモデル...
2015年1月9日金曜日
貯金箱を割る日 11 [尾池和夫] / 仮屋賢一
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三門を抜けて秋風南禅寺 尾池和夫 今からちょうど百三十年前、琵琶湖疎水が着工された。当時の京都府知事、北垣国道が計画し、主任技術者の任についたのは工部大学校を卒業したばかりの田辺朔郎。京都の一台プロジェクト、過酷な工事に命を落とす人も。しかし明治期から今にいたるまで...
2015年1月3日土曜日
貯金箱を割る日10 [尾池和夫] / 仮屋賢一
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花折断層に沿つて音たて春の川 尾池和夫 今年で二十年を迎える。兵庫県南部地震と、それによる阪神・淡路大震災である。京都の地で地震を研究する京都大学元総長・尾池和夫氏にとって、この地震はいかなるものであったのだろう。 掲句はその年、平成七年の作。花折断層とは、滋...
2014年12月29日月曜日
貯金箱を割る日 9 [豊玉] / 仮屋賢一
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たたかれて音のひびきし薺かな 豊玉 新選組副長土方歳三の最期を飾る発句。春の七草でもある薺、別名は「ペンペン草」。ペンペン草で遊ぶ時、実のついた支茎をひとつひとつ慎重に下に剥き、でんでん太鼓の要領で主茎をくるくる回して音を鳴らす。だから、薺が音を鳴らすのはこれといっ...
2014年12月17日水曜日
貯金箱を割る日 8 [豊玉] / 仮屋賢一
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春雨や客を返して客に行 豊玉 新選組副長、のち蝦夷共和国陸軍奉行並、土方歳三。豊玉は彼の俳号。この句は、文久3(1863)年以前の句であり、多摩から京の浪士組へ赴く際にまとめられたもののうちの一句である。時代を考慮すれば、これは俳句ではなく発句なのだが、そういう細か...
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