2017年10月22日日曜日

DAZZLEHAIKU13[杉山久子]渡邉美保



  縞縞の徹頭徹尾秋の蛇   杉山久子


琵琶湖周辺の里山を歩いているとき「蛇がいる」という声を聞いた。近寄ってみると、縦縞の蛇が草の中に横たわっていた。人の足音や人声にも動く気配がない。ぱっちりと開いた目の周りには、蠅が集っている。その蛇は死んでいた。

掲句、「徹頭徹尾」が意表をついていて、とてもおかしい。頭から尾っぽまで一貫して縞が通っているということだろうか。秋になり動きが鈍くなった蛇が、ゆっくりと縞模様を見せてくれたのかもしれない。

この句の中にあって「徹頭徹尾」は、熟語本来の意味を離れて脱力。縞縞の蛇のためにある言葉のように思われてくるから不思議だ。しかも、この蛇のために使われると、字画の多い四文字の漢字がするするとほどけて、一匹の蛇になってしまいそう。
「徹頭徹尾」が軽やかに弄ばれているようだ。


〈句集『泉』ふらんす堂/2015年所収〉