2017年9月6日水曜日

DAZZLEHAIKU10[鎌田 俊]渡邉美保



  蚊の仔細眺めんと手を喰はせをり  鎌田 俊


「刺されるのは嫌ですが、近寄ってきたら観察する余裕を持ちつつ、夏を乗り切りたい」という記事を読んだ。もちろん蚊の話。

 蚊のほとんどの種類のメスは、脊椎動物の血を吸うが、それは卵をつくるため。オスもメスも日々のエネルギー源としては花の蜜などを吸っていて、血と蜜が入るところは、体の中で分かれているのだとか。そんな話を聞くと、血を吸いにくるメスの蚊がいじらしく思えてくる。

 手にとまって血を吸っている蚊の様子を観察している姿は、ちょっとおかしく、俳味にあふれている。一句一章のおおらかさ、「手を喰はせをり」の大仰な言い方が効果的である。

 ここには、仔細に眺めた蚊そのものではなく、「手を喰はせをる」人(作者)の人となりが表れている。


〈東京四季出版「俳句四季」2017年9月号〉