2025年11月22日土曜日

DAZZLEHAIKU85[北大路翼]     渡邉美保

    メンチ揚げ続く銀杏降り続く   北大路翼


 給食調理員となった作者の給食俳句日記である。一学期、二学期、三学期の章ごとに一年間の、その日の給食の献立と短文、俳句が一句書かれている。読み進むうちに、もう大人になってしまった我が家の子どもたちの小学生のころことや、給食に関するやりとりなどが思い出された。月初めに貰う給食献立表を冷蔵庫に貼り、あれこれとよくしゃべっていたのが懐かしい。

掲句、その日の献立は〈麦御飯、メンチカツ、味噌汁、三色和〉

 「コロッケより成形しやすいが、一日中メンチカツを成形してゐるとメンチを切りたくなる。風が強くて落葉が舞うてゐた。」

 給食は、生徒分教師分など合わせて、だいたい550食分を毎日作るとのこと、大変な量である。メンチ切りたくなる気分わかるような…。

 次々と機械的に揚げられてゆくメンチカツ。校庭では晩秋の冷たい風に、銀杏の葉がしきりに降り続く。「続く」のリフレイン、メンチカツと銀杏の意外な取り合わせ。銀杏黄葉の明るさに一抹の屈託が滲む。

名月をつくる身分となりにけり

吉野汁とろりと神の集まりぬ

里芋を剥くのも飽きてただ老いる

ぽたーじゅのぽたぽたぽたと秋ふかむ

食パンの耳はいつでも冬である


〈句集『給食のをばさん』(2025年/角川書店所収)〉