芋虫と同じもの食ふ昼下り 仲寒蟬
芋虫はキャベツやブロッコリー、茄子、青菜類を食べるというか
ら、確かに私たちは芋虫と同じものを食べている。
昼下りのランチ、しゃれた盛付けのサラダを食べていて、ふと「芋虫
と同じもの」を食べていると気づく瞬間を想像してみると、ドキッと
する反面、なんだか可笑しくもある。ニンゲンも芋虫も同じ地平にい
て、同じものを食べている。親近感を感じると同時に負い目のような
ものもありそうだ。
私たちニンゲンも、小さな虫や動物や、木々や水、森や空や人知を超
えたものの一部でしかないと思わせてくれる一句のような気がする。
句集中の好きな蜩の句を。
時間差で来る蜩のさびしさは
千古とはひぐらしのこの繰り返し
ひぐらしの声昨日から明日から
電柱が樹になる呪文かなかなかな
ひぐらしや少年の吾木の蔭に
神童のその後の話ひぐらし鳴く
〈句集『巨石文明』(2014年/角川学芸出版所収)〉