2018年1月16日火曜日

DAZZLEHAIKU17[岩田由美]渡邉美保



   くひちがふあり枯蓮とその影と  岩田由美

冬の日を浴びて、枯蓮は水面にそれぞれの影を落としている。枯れた蓮の茎や葉、朽ちた花托などが残骸のように残っている姿は痛々しいが、青空と枯蓮と、水面に映る影が織りなす造形は現代アートのような面白さがある。
掲句、そんな枯蓮とその影とを一つ一つ確かめている作者を想像すると、なんだか楽しくなってくる。あるはずの影がないぞ、と作者自身も枯蓮の一本になって水鏡を覗いているかのようだ。
「くひちがふ」ところに動きがあり、明るさがある。枯蓮同士がじゃれあっているのかもしれない。作者の自在な眼差しを思う。



〈句集『雲なつかし』(ふらんす堂/2017年)所収〉