2020年2月6日木曜日

DAZZLEHAIKU42[千坂希妙]  渡邉美保


  日向ぼこ靴下脱いでふと嗅いで       千坂希妙

  え~、嗅ぐの? と思わず笑ってしまう一句。
 冬日にあたたまり、いい塩梅に身体も心もほっこりほぐれ、足先ももそもそと、つい靴下も脱いでしまう。靴下を脱いだときの開放感。その気持ち良さが伝わってくる。
 そして、脱いだ靴下をふと嗅いでみる、たった一人の日向ぼこ。けっして、いい匂いとは言えないことは明々白々。その仕草を想像すると可笑しいが、どこか哀感が漂う。
 芳香ではないとわかっていても、つい嗅いでしまう、あるいは嗅ぎたいと思う心理は一体どこから来るのだろう。
 嗅覚には、へんなにおいを嗅ぎたいという欲求があるのではないかと思うことがある。ウォッシュタイプの山羊のチーズの強烈なにおいを嗅いで大笑いしたことがある。なんだか喜んでいるように…。

 句集中の〈手囲ひの螢を嗅いでゐてひとり〉〈新藁の匂ひがしたる馬糞かな〉
どちらも、佳き匂いとは言えない匂いを嗅いでいる。あたたかく、切ない作者の嗅覚である。

〈句集『天真』(2019年/星湖舎)所収〉