2015年4月24日金曜日

黄金をたたく18 [高橋修宏]  / 北川美美


和を以てなお淫らなるさくらかな  高橋修宏 

桜とはだいたい淫らな感じと思っるので掲句はツボにはまる。日本国の象徴でもあり、国が栄えるということの目出度い雰囲気のある花、日本人の精神性に置き換えられるといわれている桜である。 その桜、そしてそれを愛でる人達も含み、ややアイロニーの視線でみている心情と読む。

江戸・吉原の桜は、歌舞伎の舞台でもよく登場するが、当時の吉原の桜並木はレンタルでその時だけ植えられたいわゆるチェルシーフラワーショーのような人寄せ桜だった記録を見る。 桜が人の心をワクワクさせ、日常から離れた気分にさせる効果を狙ったのだろう。 ソメイヨシノの明治以後の爆発的人気に、桜並木、桜の名所に人が寄ってくる、老若男女、集ってくるのである。

「和を以て貴しとなす」は聖徳太子が制定した十七条憲法の第一条。日常では使われないその文言の凛とした感じにハッとする。作者はその意味に同意しつつ、<なお淫ら>で「とはいってもねぇ」と思っている。物事すべてに表と裏がある。美しさが醜さを含んでいるように。

<なお>により、この桜は、しばらく咲き続けている満開の桜の風景なのだろう。散る前ぎりぎりの桜のように思う。桜の花の重みで少し枝が揺れている姿も見えてくる。

《『虚器』2013草子舎》