2015年9月7日月曜日

処女林をめぐる 5 [古沢太穂]  / 大塚凱


税重し寒の雨降る轍あと  古沢太穂
今や、国の借金が1000兆円を超えたらしい。僕が幼い頃は800兆だか900兆だかだったような気がするのだが、いつのまにか増えている。僕らは生まれた頃から1人あたりウン百万円の借金を背負っている、という言説があるが、僕らの世代にある閉塞感はその背中の重たさなのだろうか。重たい背中は、自然と視線を俯かせる。

太穂が生きた時代には、こんな重たさはのしかかってはいなかっただろう。それはもっと直接的で、実体のある税の重たさだったはずだ。轍あとーー太穂の詠んだ貧しさは、どこか律令制のもとで取り立てられた税をも想像させる。古代、太穂の時代、そして我々の時代へと轍は繋がっているのだ。
出典:古沢太穂『三十代』
昭和25年
神奈川県職場俳句協議会刊