2015年9月28日月曜日

処女林をめぐる 8 [古沢太穂]  / 大塚凱


飛雪のホーム軍手という語なお生きいる  古沢太穂
軍手はそもそも戦時中に海軍が使用していたものであった、と聞いたことがある。もはや我々には「聞いたことがある」と伝聞的に述べる他にないことが切ないが、太穂は既に前の戦争を経て「軍手」という言葉が残った''あはれ''を感じていた。飛雪とは違う、薄汚れた白さの軍手。その存在は時を経ても、雪に紛れることはないのかもしれない。

出典:古沢太穂『三十代』
昭和25年
神奈川県職場俳句協議会刊