木星の軌道に夏の夜の電話 日下野由季
木星といえばあの輪っかを真っ先に思い出す。水星でも金星でもなく、言葉と言葉の衝突を探る。詳しくはないが電話と惑星は何も関係ないだろう。わからない嘘もここまで堂々とすると気持ちよい。曲者なのは中七の「に」。木星のエネルギーがそのまま下五に連結することで、電話の内容を想像させる楽しみが広がる。よく、「俳句には因果関係がない」方が良いという話題が句会で挙がるが、よい参考になる。宇宙飛行士を除き、誰からも距離の離れた宇宙空間を詠むことは、俳人として同じスタートラインでの勝負なのかもしれない。
(角川俳句2013年月号 希望の星たちー新世代作品特集 「香水」より)