2014年12月13日土曜日

身体をよむ 3 [桂信子] 今泉礼奈


壁うつす鏡に風邪の身を入れる 桂信子

姿見ほどの大きい鏡を思った。そこには壁が、それはもう置いたときからずっと映りこんでいる。そして、その鏡の前に立つと、風邪のため弱っている自分がいた。自分じゃないような、でも自分だという、すこし寂しい気分になる。

「身を入れる」という能動的な動きとはうらはらに、その後の気分はせつない。

たぶん、人生そんなことが多いのだろう。これぐらいは受け入れなければならないのだ、と思うしかないのだ。

(『女身』1955年所収)