2015年10月9日金曜日

黄金をたたく23 [杉山久子]  / 北川美美



秋天やポテトチップス涙味  杉山久子

ポテトチップスは身近な乾き物(といってよいのか)である、口淋しいときにポテトチップスが小腹を満たしてくれる。こだわりのある作者であれば、ポテトチップスの新作味は相当試されているのではないかとすら想像できる。男梅味、夏塩風味、BBQ、コンソメパンチ、のりしお…etc. 最近は地域限定やら、季節限定やらで、日本のポテトチップス浸透も相当なもので国民的乾き物の地位を獲得している。

因みに筆者は、英国好みゆえに、ソルト&ビネガー(カルビーでは、フレンチサラダとなっているが酢が効いている味。あるいは“スッパムーチョ”でも代替えが効く。)が無性に恋しくなる。形状では、高級志向の厚切りポテトチップスはどうも好かない。パッケージデザインで買ってしまうポテチもある。フラ印のポテトチップスである。こんな感じです。(http://matome.naver.jp/odai/2139312140924061501


作者も筆者同様、きっとどんなときにもポテトチップス、通称ポテチが欠かせない存在で、コンビニに行って買う気もないのに手に取って買ってしまうのではないか、その境遇に共感するのである。ポテトチップスは、この国ならではの通称:ポテチに成長したのだ。

さて作者はこれを、秋天にポテトチップスを口にして、それを涙味としている。どんな時も小腹が減るのである。喜びに似た飲食という行為が一転して涙の味を感じるというのが人間の心理の複雑性を孕んでいるかのうようである。失恋かもしれない涙、もしかしたら昔の恋を思い出している涙なのかとも想像できるのだが、それをポテトチップスの味に仕立てているのが爽やかである。


<「泉」ふらんす堂2015所収>