2017年6月3日土曜日

DAZZLEHAIKU3 [恩田侑布子]渡邉美保



驟雨いま葉音となれり吾(あ)も茂る   恩田侑布子


新緑の季節から夏へ向って、樹木は枝葉を伸ばし、緑を押し広げてゆく。繁茂した緑の深さはエネルギーに満ちている。そんな季節の中、突然降り出した雨。驟雨は、急にどっと降り出し、しばらくすると止んでしまう雨である。

「驟雨いま葉音となれり」の一瞬の切り取りが、雨の勢いやスピードを実感させてくれる。

葉音となった驟雨は、作者の聴覚を通して、五感を刺激し、覚醒を促す。驟雨は作者の内部にも降ってくる。身体はすみずみまで潤い、緑に染まる。そして内部は外へ反転する。

樹木と吾は一体となり繁茂する。「吾も茂る」のだ。生命の源のような力を得て。
葉音はいつしか風の音を含んでいるだろう。

 〈句集『夢洗ひ』2016・8角川書店 所収〉