筍に虎の気性や箱根山 「呼鈴」
筍の少し黄色く川重なるところが黒く筋になっている処に虎を感じたのであろうが、それよりも若々しく尖った筍の立ちざまに虎の気性を感じたのである。一旦こう謂われると、筍の気性あるなら、虎の如くであろうと思わせる。下五の箱根山は筍及び虎と、危うく繋がっていると思うのは、広重の東海道五十三次の「箱根」を思うからである。伸び上がるようにして少し左に傾く箱根山の様は虎が飛び掛からんとして勢いを溜めるようではないか。唱歌「箱根八里」に「箱根の山は天下の険」と詠われた険しさも虎を思わせ、且つ広重描く、緑や青や黄や土色が甲羅の如く組み合わさった箱根の山は、筍の幾重にも皮を纏った有様と通じる処が在るように思う。平成二十年。