2014年10月16日木曜日

今日の小川軽舟 10 / 竹岡一郎

関係ないだろお前つて汗だくでまとはりつく

「鷹」平成二十三年八月号掲載。最初読んだとき、私は思春期の息子が父に反抗している景かと思ったのである。作者に聞いてみたところ、会社の人事の景らしかった。一見、前衛句のようでいて、実は人間関係の本質を的確に写生している。「関係ないだろ」というなら、涼しい顔をしていれば良いのに、「汗だくでまとはりつく」果てに抜き差しならぬ事に陥るのが、いつの世も変わらぬ厄介さである。これを仮に国家間の紛争に置き換えても、納得は行く。小は家族から大は国家に至るまで、掲句は意外と人間の業の動きを抉っている。