空蟬の終らざる終りのかたち 「呼鈴」
言われてみるとその通りで、幼虫としては終っているが、決して屍ではない。幼虫時と成虫時の形が酷似しているにも拘らず、脱皮の前後で地中と地上とに大きく生態圏が分かれるのは、蟬特有の成長である。空蟬という、完璧に生の形状をとどめている抜殻に、ある感慨を抱くのは、日本人、空(くう)の概念を文化として持つ民族ならではだろう。一切は縁起流転する、この身もまた然り、しかし空蟬を見て、抱く感慨。上手く言えないが、死を超える希望のようなもの、或いは生をやり直す意志の匂い。平成二十一年作。