曼珠沙華火焔土器より寂しいか 佐藤成之
曼珠沙華は取り合わせに多用される印象が私にはある。火焔土器の持つめらめらしたイメージともかなり近い。その近さのために、互いをぶつけるという挑戦はあえて避けられてきたのだろうか。
「寂しいか」で一気に引き寄せられた。「火焔土器」までは字面も質感も重たい。しかし、「この人は寂しさで二つを比較しようとしている」と思うと句の印象が和らいでくる。どちらの方が寂しいだろうかという謎かけを残し、作者は去ってしまう。
火焔土器は何色だろう。パッと思いつくのはどうしても赤茶色なのだが、もっと土の色に近い火焔土器であってほしいとも思う。
(『 超新撰21』邑書林2010年)