2014年11月3日月曜日

鴇田智哉句集『凧と円柱』より 1 / 今泉礼奈



すりぬける蜥蜴の縞の流れかな  鴇田智哉



止まる、うごく、止まるを絶妙な時間感覚をもって繰り返すのが、蜥蜴である。ここでは、その中の、うごく、が急にはじまっている。そのとき作者は、驚きとともに、蜥蜴の縞模様に流れを感じたのだ。
蜥蜴の独特な色と模様が、読者の頭の中にしばらく残る。上五のすりぬける、も秀逸。蜥蜴は、決して何かを避けてうごいた訳ではないが、その動きは確かに、人間のすりぬける動作と重なるものがある。

感覚的な句かと思いきや、描写の効いた一句。ひやっとする感じが、まさに夏だ。


<鴇田智哉句集『凧と円柱』(ふらんす堂2014年) 所収>