2014年11月18日火曜日

きょうのクロイワ 4 [松野苑子]/ 黒岩徳将



豊年や鍋に鍋蓋ひとつづつ    松野苑子


鍋は冬の季語だが、ここでは豊年が主となっているので構わない。

豊年→祝う→料理を振る舞うという発想はある。私も、「豊年のシチューの鍋を抱く両手」という句を書いたことがあるが、優しさよりも俳諧味の方がじわじわと感興を呼び起こすのではないかと掲句を挙げた。鍋が次々とぱかぱかと開いていく様を見たのだろう。三つ以上の鍋と思いたい。目出度さと面白さがブレンドされている。

(『真水(さみづ)』 角川書店 2009年)