2023年6月27日火曜日

DAZZLEHAIKU70[山西雅子]  渡邉美保

 水筒の中にゆふやけ子は育つ    山西雅子

 夕焼けをたっぷり浴びて帰ってきた子が目に浮かぶ。真っ黒に日焼けした野球少年かもしれない。帰宅した子に手渡される空っぽの水筒。少年のお供の水筒もまた、夕焼けをたっぷり浴びてきたのだ。水筒の中にはまだ夕焼けが詰まっている気配。子供たちの話し声や歓声も残っていそうである。


 母に手を引かれて夕焼けを見ていた幼年期、夕焼けの前に家に帰っていた小学生低学年の頃。友達と夕焼けの中をいつまでも歩いた思春期。掲句の「子は育つ」の措辞から、子の成長と夕焼けの関係をたどるのは懐かしい。夕焼けと共に子は育つのである。


 夏の夕暮、西の空が真っ赤になり金色を帯びてゆく雄大な景色の中の小さな存在である子どもと水筒。その水筒の中も夕焼けだという詩情ゆたかな世界に惹かれる。

 西の空が、茜色に染まるのは翌日の晴天の予兆。子の育つ未来の晴れやかさを象徴しているようでもある。

〈句集『雨滴』(2023年/角川書店)所収〉