湯豆腐の湯気の猛きが我が顎に 小澤實顎に湯気が付き、サンタクロースのような髭になった景を想像した。「猛き」と良いながら実際は大した事態でないというギャップがクールである。余談だが、形容詞連体形+(名詞省略)+述語という構造が決まるとかっこいい…とこういう句を見て思う。
『砧』より。
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
湯豆腐の湯気の猛きが我が顎に 小澤實顎に湯気が付き、サンタクロースのような髭になった景を想像した。「猛き」と良いながら実際は大した事態でないというギャップがクールである。余談だが、形容詞連体形+(名詞省略)+述語という構造が決まるとかっこいい…とこういう句を見て思う。
バターナイフきらり元日遠くなる 森山いほこ
見せ消ちのここが要ぞ獏枕 大山雅由
片腕を忘れし卓に石榴の実 米岡隆文
餅花のしなりて曾父母父母孫子 宇多喜代子
手が伸びて昼寝の子らをうらがへす 杉山久子
波音の虞美人草でありにけり 山口昭男
万緑や行方不明の帽子たち 曾根 毅
鐡橋に蟹に五月の雨が降る 中島斌雄
虹立ちて虹の消えざる来世は嫌 岡田一実
毎日の柿の紅葉の懐かしき 若杉朋哉
桜蘂降るまつたりと土に雨 峯尾文世
耳目又惑はむ梅雨に入りにけり 相生垣瓜人
讃美歌や揚羽の吻(くち)を蜜のぼる 中島斌雄
布団の横白馬現れ消えにけり 関悦史
雪片の白とは違ふ黒ではなく 本井英
六甲を低しとぞ凧あそぶなる 阿波野青畝
更衣駅白波となりにけり 綾部仁喜扉が開き、車両からホームへ今か今かと待ち構えていた白い服の人々が飛び出した直後だろうか。もしくはぎゅうぎゅうの改札から抜け出し三三五五となる直前だろうか。「綾部仁喜の百句」によると 「『中央線八王子駅隣接の一病院に入院中の作』という自註がある。」とのことだが、改札説でも面白いのでは、と思った。いや、ホーム説の方が景が立体的だろうか。
テント張る男言葉を投げ合って 朝田海月
キャンプ張る男言葉を投げ合ひて 岡本眸
縄電車傾きながら春野来る 塚本みや子