香水の香の内側に安眠す 桂信子
香水の香りに包まれながら、眠りにつく。円を描いているかのような、やわらかさがある句だ。
しかし、「香水」というものは、外出時に使うものではないか。自分のため、というより、他人のため、に使うものだと思う。それを自分の、しかも眠りにつくために用いている。なんと贅沢な。
「安眠」という言葉は、やたら説明的な感じがする。むしろ、ここで「安眠」を強調するということは、普段安眠できていないのか。
すこし心配になりつつも、このちょっとした危うさが、「香水」らしい。
(『晩春』1967年所収)