【101、高屋窓秋さんとカラー】
頭の中が極彩色の夏野となっていく
【102、まひろさんと安福望さんとクリスチャン・ラッセン】
プレシャスラブドルフィンフリーダムエンドレスドリーム。すなわち、愛、自由、夢。
【103、加賀田優子さんとおにぎり】
おにぎりをつくるみたいにわたしたちされてできたのかもしれないね
【104、介護百人一首と形式】
僕たちが何をするか、なぜそうするかなんて、いったい誰にわかるだろう。
【105、池田澄子さんとピーマン】
ピーマンに出会う方法はすくなくともふたつある。ひとつは、わたしの場所にピーマンを呼び込んでくること。ふたつめは、わたしじしんがピーマンになってしまうこと。
【106、樋口由紀子さんとジャック=マリー=エミール・ラカン】
「きみは、この地球が宇宙の精神病院だと思わないか?」
【107、佐藤みさ子さんとたたかい】
生まれたてですとくるんだものを出す
【108、榊陽子さんと悪意】
汝の虫酸を、汝のたてがみを、われに与えたまえ
【109、ひとり静さんとポ】
すべてのポのために。
【110、三谷幸喜さんとミュージカル】
もうお風呂の後、濡れた体でいつまでも歩き回らないよ。君の姪っこの誕生日には必ず電話を入れて、ミッキーマウスの声でハッピーバースデーを唄うよ
【111、鴇田智哉さんと人参】
ニンジンを並べてわかったこと。
【112、安福望さんと木】
どんなに緊張した場でも吐き気がして卒倒しそうな場でも、とにかく、はじまったら・おわる。どんなにそれが艱難辛苦の場所だって、はじまったら・おわる。それを私は勇気にしていこうと思う
【113、鶴見俊輔さんともうろく】
私は「でも」ということしかいえない。赤ん坊がいえるのはそういうことなんだ。「でも」が、私の生涯の著作になったということでいいんじゃないか。
【114、西尾勝彦さんとこたつ】
…こたつ主義とは何か…理想のこたつ生活…こたつと本…こたつとコーヒー…こたつとお茶…こたつとみかん…こたつと猫…こたつと湯豆腐…こたつとおでん…こたつと音楽
【115、山田露結さんと家族】
家族と生きるって、なんですか。
【116、最果タヒさんと死なない】
「生きる」ことではなく、「死なない」ことをきみのたたかう価値として。
【117、新・幻聴妄想かるたと不思議の国のアリスたち】
チュルチュルピー小動物に演説する私
【118、仲畑流万能川柳と爆笑問題】
「世界とお前の戦いでは世界に味方せよ」というカフカの言葉
【119、川嶋健佑さんとキキとララ】
ララは、鳥かごに閉じ込められたキキのところへかけよりました。「おい、弟よ! 魔女はやっつけた! あたしたち、助かったのよ!」「ほんとうかい! ありがとう、ララ」
【120、岡村知昭さんとAなのにB】
然るべく生きるべきなのに、然るべく生きられなかったら、泣いていい。
【121、新聞歌壇とアントン・パーヴロヴィチ・チェーホフ】
彼の前歯が胸につまっていく。「ねえあの頃はよかったとは思わない?人生のなにもかもがまっすぐであったかくてむじゃきで幸せだった。なんだったのかしら」
【122、千春さんと夫への説得】
説得は、激しい。説得には、生きてゆくことの激しさがある。私がしにたくても、あなたがいるのだ。あなたの説得されなさの激しさのあなたが
【123、柳本々々さんと過剰性】
というのも、そのたびに、そのたびに特異に、そのたびにかけがえなしに、そのたびに無限に、死はまさしく《世界〈の〉終わり》だからである。
【124、樹萄らきさんとキャラ】
欠損と誇張を媒介として生み出されるのが「キャラ」=のび太なのだ。それゆえキャラ=のび太には内面がない。アトムの内面はアトムの髪型であり、のび太の内面は0点なのである。
【125、高橋順子さんとあなたに会ってこんなに遠くまで来てしまった】
あなたなんかと結婚するひとがいるとは思えないと人に言われたことがあります
【126、吉井勇さんと吉井勇さんの歌の引用を間違える谷崎潤一郎さん】
どこにもない(no-where)から、今・ここ(now-here)の世界へ
【127、疋田龍乃介さんと犬がひげのがん】
アリスはあっち側に行ったまま〈帰ってこられなくなるかもしれないわ〉と思ったので、その行為に名前をつけた。犬、と。
【128、山下一路さんと失意のアメフラシ】
何一つとして人から贈られたものはない。一切のものをあらたに獲得しなければなりません。現在と未来ばかりではありません。過去さえも新たに獲得しなければならないのです
【129、月波与生さんと本当に悲しい】
私は、あなたにかなしい縁を感じてゐる。
【130、パパ(ほんだただよし=本多忠義)さんとパパのことば】
「ねえ、真実を話して」「真実? ダースベイダーはルークの父だよ」
【131、Sinさんとおでん剥ぎ】
むかし、友達に、いくらこころが汚濁してても、身体はきれいだからあなたのこと好きだよっていったら、ふつう逆だよねっていわれたんだ
【132、曾根毅さんと巨人】
立ち上がった巨人への最後の一撃は、せつない。
【133、中村安伸さんとバターになった虎】
ものを書くというプロセスの核心にどのような暗黒の謎がひそんでいようともそこにはただ一つの企業秘密があるだけだ。それは君は生きのびなくてはならないということなのだ
【134、囲碁川柳と体液】
どんなときでも彼は爽やかに「デュフフコポォ」と笑ってくれた。「心配ないよ」と言って「オウフドプフォ」と微笑した。私を励ましてくれたときの彼の「フォカヌポウ」の笑顔を私は忘れない
【135、村井見也子さんとやがて近くにいるそれ】
現代川柳は、ていねいに、ぼんやりしている。
【136、広瀬ちえみさんとなんにも見ていない】
戻れないけれどどうぞ
【137、山川舞句さんと怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒】
怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒怒
【138、奈良一艘さんと鯖缶】
クリスチャン・ラッセンのこんな名言がある。「フォーエバー・ラブ」
【139、むさしさんとエネルギー噴出】
止めてくれどんどん人が好きになる
【140、中村冨二としっぽ】
しっぽは、何人称なんだろう?
【141、三宅やよいさんと鶫】
鶫って、読めますか?
【142、北山まみどりさんと少女マンガ】
そもそも恋愛状態の人間というのは、いろんな矛盾の中に置かれているといってもいいんです
【143、陣崎草子さんと蛇口】
「好きでしょ、蛇口。だって飛びでているとこが三つもあるし、光っているわ」とモネは言った
【144、藤本玲未さんとやつ】
「死なせたら死んだままだと気付かずにあなたにずっと話しかけたい」はあの星のことば
【145、橘上さんとイズミ】
イズミは寂しさで死んだ。その寂しさは数値化され、イズミの死んだときの寂しさは「1IZ」という単位で表現され、寂しさの致死量を計る基準値となった
【146、今井和子さんとネコバス】
猫と本って似ているよう気がする。向こうからはこない。時々仲が悪くなる。でも仲がいい時は変に仲がいい。わかったようなきもちになることがある。そして次の瞬間わからなくなる。
【147、種田山頭火とさみしい】
倒錯してしまった私(猫)には帰る場所なんてない。だから私はいつもさみしい。まっすぐな道なのに全然どこにもたどりつかない。たどりつけない。歩いても歩いても。また鞄に帰ってくる
【148、カニエ・ナハさんと改行】
改行するのはその行のところでことばの角を曲がるからです。ここを曲がったら、自分の知らないなにかがあるのではないかと思って、角を曲がるのです
【149、吉岡太朗さんと潜勢力】
よくわからない知らないひとがわたしがおしっこをするところを見にきてしかもよくほめる
【150、谷川電話さんと恋人】
恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の恋人の不死
【151、浅沼璞さんと桜の園】
あなたのものかもしれないかった桜の園がいまやわたしのものであるということ。
【152、芥川龍之介と芥川君が自殺した夏】
芥川君が自殺した夏は大変な暑さで、それが何日も続き、息が出来ない様であった。余り暑いので死んでしまったのだと考え、又それでいいのだと思った。
【153、ロマンシングサガ2と皇帝継承歌】
それに、だれにだって、あるだろう、やるしかないっていう気持になる時が。
【154、楢崎進弘さんとメロンパン】
次の世がメロンパンでもかまわない
【155、赤松ますみさんと光りなさい】
魔法だと思うこの世に生きている
【156、北川美美さんと中にどんどん入っていく】
いったい、私は、誰を待っているのだろう。はっきりした形のものは何もない。ただ、もやもやしている。けれども、私は待っている。大戦争がはじまってからは、毎日、
【157、きゅういちさんと反逆】
縁取りにぬるいファンタをたててゆく
【158、いなだ豆乃助さんと渦】
鳴門には縁もゆかりもない@
【159、生駒大祐さんと空と底】
花の中をゆっくりゆっくり歩いてゆかなくてはね
【160、柴田千晶さんと鋏】
複雑な穴と頭をめぐって
【161、廿楽順治さんと幼虫】
【ペンフレンド募集】字の書ける人ならどなたでも。顔をうしなった友だちになりませう。理想の
【162、川柳少女と五七五系女子】
そういえば私玉ネギだめだった
【163、徳田ひろ子さんと人】
野口五郎からのみんなへの問いかけ
【164、松井真吾さんと収拾のつかない空間】
向日葵のアジトで内緒の少女たちと遊べ
【165、河野聡子さんときみを呼ぶのは生きている者だけだ】
きみは長いあいだ呼ばれていると感じていた。とにかく段を踏まなくてはならない。自由にのぼったりおりたりできるわけじゃない
【166、寺山修司と中国⇄アフリカ】
初出のかたちは、サバンナの象のうんこよ聞いてくれつらいせつないこわいさびしい
【167、楳図かずおさんと美少女⇄蛇少女】
美少女の嘔吐がほしいな/裏悪水
【168、坂野信彦さんと律文】
日本語の発話の最小単位が二音であること。一音の語は、しばしば二音ぶんにのばして発音されます。たとえば「目見て」を「めーみて」、「絵かく」を「えーかく」というぐあいです
【169、飯島耕一さんと二人称】
来るべき古代にはきみは水をくぐるように生きることができる。来るべき古代にはきみは言語によって苦しまない。来るべき古代にはきみはきみとは別のものである
【170、田中槐さんと素粒子】
ニュートリノは他の粒子と相互作用しにくく私達のからだを毎秒毎秒ニュートリノは10超個以上もつきぬけてゆく。ニュートリノは空からぱちぱち降ってきて私達のからだを通り抜けてゆく
【171、佐藤弓生さんと幻想】
ながいながいあそびのはての生のはじまり
【172、川口晴美さんとシン・ゴジラ】
地下なのか夜なのか明かりというあかりの失われた場所で、おそろしいことがすばらしいことが起こるのをわたしは待ちました
【173、瀧村小奈生さんと木じゃないとこ】
そうですかきれいでしたかわたくしは
【174、米山明日歌さんと鏡】
鏡からわたしやわたしたちが帰ってくる
【175、荻原裕幸さんと文字禍】
この発見を手始めに、今まで知られなかった文字の霊の性質が次第に少しずつ判って来た。文字の精霊の数は、地上の事物の数ほど多い、文字の精は野鼠のように仔を産んで殖える
【176、岡部桂一郎さんと岡部桂一郎さん】
3に5を足せば桂一郎9になるなあ?そんなむずかしいこと聞かれても
【177、?さんと松茸】
壁を一枚へだてて、そこはもう、車がバンバン通ってる……壁がバタンて倒れたら、ここは、この坂を通る人や車から丸見え……フフフ……私、お化粧してこなかったことを悔やむかしら……。
【178、大岡信さんとさわる】
さわることはさわることの確かさをたしかめることか。
【179、鶴彬と戦争Ⅰ】
「驚いてはいけませんよ」と言いながら、そっと白いシーツをまくって見せてくれた。そこには、悪夢の中のお化けみたいに、手のあるべき所に手が、足のあるべき所に足が、まったく見えないで、
【180、塚本邦雄と戦争Ⅱ】
電車の中でもセックスをせよ戦争へゆくのはきっときみたちだから
【181、野沢省悟さんと中村冨二】
私の影よ そんなに夢中で鰯を喰ふなよ
【182、芦田愛菜さんと下の句の忘却】
「やって」と黒柳徹子は言った。
【183、河野裕子さんとあなたとあなた】
あなたとあなたに触れたい
【184、茨木のり子さんとわたしが一番きれいだったとき】
あなたが一番きれいだったとき、とんでもないところからいったい何が見えていたのか
【185、小久保佳世子さんと1】
一人称単数としてあなたの前へ
【186、萩原朔太郎さんと病気】
おわああ、ここの家の主人は病気です
【187、北野岸柳さんと密会】
歳時記の中で密会してみよう
【188、神野紗希さんとすぐそこにある神話】
ともかくむかしむかし、天から降り立ったコンビニな、それが変えたんだよ人類を。人類を、深夜小腹減ったって問題から救った、それから、夜道暗くてこれ心細いぞって問題
【189、与謝野鉄幹と斉藤斎藤さん】
「あなたと一緒になりたい」じゃなく、「あなたになりたい」になってしまったらどうしたらいいのか
【190、奥村晃作さんとボルヘス】
ここにはカテゴリーしかないので、百年後、やはり、中年のハゲの男が立ち上がる、立ち上がり大太鼓打つ。年齢も頭髪も体力もまったく変わらずに。
【191、金子兜太さんとアクセスポイントⅠ】
蝉を流れるスピリットと岩を流れるスピリットが、相互貫入を起こして染み込み合うと?
【192、小澤實さんとアクセスポイントⅡ】
本の山がこちらに崩れてきたときに、アクセスポイントを発見してしまう
【193、普川素床さんとアクセスポイントⅢ】
顔のスイッチを入れる 夜を消すのを忘れていた
【194、佐佐木幸綱さんとたつからだ】
のぼり坂のペダル踏みつつ子は叫ぶ「まっすぐ?」、そうだ、どんどんのぼれ
【195、村木道彦さんとするだろう】
「するだろう ぼくをすてたるものがたりマシュマロくちにほおばりながら」とは言うけれど、誰がするのか?
【196、前田夕暮さんとじっくり見る】
異常なぐらいじっくりと見る vs 顔を近づけ過ぎてだれだかわからない
【197、福島泰樹さんとバリケード・一九六六年のノルウェイの森】
あれはあれとして終わってしまってほしかった。「僕」と緑さんがあのあとどうなるかなんて、僕としては考えたくないし読者にも考えてほしくなかった
【198、野口あや子さんと大きな主体】
わたしは今大きな主体にさらされていることがわかっている。でも、あきらめて肯定する。でも、あきらめて否定する。だから、くびもとに錐が刺さろうとしている
【199、吉田恭大さんとむこう側】
最後の風景は、「名詞から覚えた鳥が金網を挟んでむこう側で飛んでいる」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
2017年9月5日火曜日
2017年4月9日日曜日
フシギな短詩100[目次]/柳本々々
【1、御中虫さんと揺れ】
2016年の〈今〉も、わたしたちの〈すべて〉の関さんは、揺れる。
【2、北大路翼さんと乳輪】
俳句は、乳房に、たどりつけない。
【3、イイダアリコさんとゴジラ】
わたしたちは俳句を通して〈初めてのゴジラ〉や〈初めての乳輪〉に出会う。
【4、松本てふこさんと希望】
語り手は逮捕されるかもしれない。でも、状況はシリアスではなく、「うららか」だ。これから「出頭」をするというのに、ここにはフシギな希望がある。
【5、石原ユキオさんと災難】
ひしめきあったペンギンたちをひとめみてわかるのは、それが〈もふもふ〉しているということである。たぶん、あなたがそこに頭からつっこめば〈もふもふ〉するだろう。わたしも。
【6、関悦史さんとテラベクレル】
語り手はいまや季語をあんのんと使える世界には暮らしていない。季語を使い、季節のなかに身を置こうとすると、〈テラベクレル〉をも抱えこまざるをえない世界。それが語り手が身をおく春である。
【7、中山奈々さんと外傷】
「傷って消すもんじゃないんだよ。生きられるものなんだ」 私は、もっと、床の一部になる。
【8、宮本佳世乃さんと心臓】
ひとりにひとつずつの心臓、ひとりにひとつずつの手、ひとりにひとつずつの足、ひとりにひとつずつの内臓、ひとりにひとつずつの身体、ひとりにひとつずつの身体の《仕組み》。わたしたちの身体は、桜餅のように、驚くほど律儀だ。
【9、佐藤文香さんと恋愛】
恋愛とは〈俳句〉に疎外される〈わたし〉のことだ。
【10、小倉喜郎さんと多忙】
だからこんなふうにも思う。語り手は身体を完成させるために「急」いでいるのかもしれないと。それならば私にもわかる。私もきっとこう言うはずだ。「急がねば」。
【11、榮猿丸さんと抱擁】
今度抱擁するときに少しだけ確かめてみてほしい。いま、〈僕ら/二人〉は〈どこ〉で〈いちゃいちゃ〉し〈抱擁〉しているのかを。
【12、長嶋有さんと不倫】
わたしたちはときどき「すごい不倫」の話をきく。わたしたちは「すごい不倫」のわきでなにげなく買い物をしたり、ブランコに乗ったり、河のほとりでたたずんでおしゃべりをしたり、電車のなかでずっと読みかけのままだった文庫本を読み終えたりする。でも「すごい不倫」はいつもそこここにある。
【13、喪字男さんと混入】
お花見のなかで、語り手は「乳房」からいま・ここの感覚をとらえようとしている。そこでは誰それがいるということが問題になるのではなく、どのような乳房があるかが問題に、なる
【14、久保田紺さんと隙間】
いま、〈大好き〉を通して〈未知〉にであう
【15、なかはられいこさんと回避】
わたしたちは、わたしたちがいつも語ろうとしない〈回避〉のなかに《こそ》、棲みつづけている。
【16、中澤系さんと理解】
「誰もが未来のどこかの地点で、世界から「理解できない人は」と告げられることになる。「下がって」と」
【17、リチャード・ブローティガンさんと俳句】
「森の中をこっそりと動いてゆくオオカミのように、書くということの、ひとりぼっちの道すじをたどりつづける勇気」
【18、野間幸恵さんと水】
たえず〈ここ〉になることのできない〈ここ〉がわたしたちのなかに〈ある〉。水、のような。
【19、米川千嘉子さんと主人公】
どんなに「死のうと思って」も、たえず、歌を、言語を、顔をとおして〈わたし〉に複数性を与えること。もうひとつの生を。どんなに生が行き詰まっても、わたしたちはわたしとわたしの往還をつづける限り、どうにか、なる。
【20、加藤治郎さんと崩壊】
わたしたちは、創造しなければならない。新しい廃墟で。
【21、東直子さんと桜桃忌】
「私の大好きな、よわい、やさしい、さびしい神様。世の中にある生命を、私に教えて下さったのは、あなたです」
【22、泉紅実さんとあんかけ】
ちゃんといちゃいちゃしてみよう。
【23、牛隆佑さんと二人暮らし】
凹凸の少ない町で、凹凸のような突然の「そして」から〈ふたり〉の暮らしは始まった
【24、岡野大嗣さんと祈り】
それは〈きれいな鼻歌〉の、終わりのない、〈とぎれとぎれ〉の、たったひとつの〈長い歌〉としての祈り
【25、木下龍也さんと幽霊】
どれだけ〈わたし〉が死んだとしても、まだやってくる生のたくましさと愛おしさ。「おめめ」、この愛すべきもの。
【26、兵頭全郎さんとポテチ】
意味に負けないよう、燃え尽きないよう、くるくると循環し続けること。無限のポテチ(∞)と共に。
【27、金原まさ子さんとシャウト】
「折檻部屋」を出たり入ったりする。真顔で。すました顔をして。折檻される季語のシャウトを目撃しながら。ああ。世界はなんて〈初めて〉ばかりなんだろう、とおもう。
【28、飯田有子さんとたすけて】
「たすけて」ほしい主体が「たすけて」と叫んでゆくそのプロセスのなかで壊れていく。たすけて
【29、柳谷あゆみさんとマリオ】
たった〈一度〉しか生きられないこと。わたしたちのすごくシンプルな生のリアリズム。
【30、田島健一さんと奥だらけ】
「もはや誰が不審者なのかすらわからない」全方位的に主体が解体される場所。
【31、飯島章友さんと巨眼】
でも誰かはわからない。誰かがいるのはわかるけれど。そして、その誰かと、ときどき、ふっと、眼が、合う。
【32、車谷長吉さんと崖】
「頭の中には崖があるのね?」「そうや、崖があるんや」
【33、川合大祐さんと野比のび太】
のび太とわたしはタンジールの大門で別れた。たしか、わたしたちは「さようなら」もいわなかったように思う
【34、外山一機さんとドラゴンクエスト】
ここは ゆうきをためされる しんでんじゃ。 たとえひとりでも たたかうゆうきが おまえにはあるか?
【35、中家菜津子さんとフェルナンド・ペソア】
あらゆる詩はいつも翌日に書かれる。
【36、吉田類さんとロラン・バルト】
少しでも希望があるのならおまえは行動する。希望はまったくないけれど、それでもなおわたしは……あるいはまた、わたしは断固として選ばぬことを選ぶ。漂流を選ぶ。どこまでも続けるのだ。
【37、北山あさひさんと廃屋】
結婚をひとりでしたい。
【38、瀬戸夏子さんと相思相愛】
「デニーズが消えたとき、どんな感じだった?」「ものすごく光ってた。きらきらしてた」
【39、夢野久作さんと犯罪】
なぜということなしに殺したくなるのです。あとからついて行きたくなるのです。
【40、佐藤りえさんと人外】
「まず最初に幽霊(妖精やら異星人や鶴)という不思議キャラ設定が紹介され、そこから二人の関係性が始まるのがサブカル的「人外」の基本セオリーなのだ」
【41、松尾芭蕉さんとゾンビ】
芭蕉ゾンビは順応するのでも抵抗するのでもない。増殖するにしても生成変化することも進化することも退化することもない。芭蕉ゾンビにはいかなる解決もカタルシスもない
【42、正岡豊さんとまばたき】
つまり、〈終わってしまった〉のではなく、〈はじまってしまった〉こと。それが《ほんとうに》ひとがあきらめることのかたちなのではないか。
【43、石川啄木さんとだらしなさ】
縦の文芸にあらわれる〈だらしない〉横の姿勢の系譜。それはなんなのだろう。
【44、穂村弘さんと魔術】
夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう
【45、荒木飛呂彦さんと五・七・五】
五・七・五は自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……わたしに勇気を与えてくれる
【46、小坂井大輔さんと三十五歳問題】
芥川龍之介にはおそらくいなかった「死ぬなと往復ビンタしてくる」先生。2016年の35歳は、奇妙に〈ひらかれた場所〉に、いる。
【47、笹井宏之さんとえーえん/永遠】
かつてジャック・ラカンは言った、「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい」
【48、ながや宏高さんと覚悟】
この連作の水は、このわたしに覚悟を要請してくる水だ。境界を越えるのか、越えないのかの、覚悟を。おまえはどうするのか、と。
【49、壇蜜さんと友だちってなんですか】
手放せることが出会いなのかもしれない。なんか、あ、手放していいんだなって。ともだちってなんですかってきかれたら、たぶん、手放せることだなって。
【50、ミムラさんと音のとげ】
短歌は〈音のきもちよさ〉だけでなく〈音のきもちわるさ〉も考えることができるジャンルかもしれない。〈きもちよさ〉だけでなく〈きもちわるさ〉に敏感であるためにはどうしたらよいのか
【51、斉藤斎藤さんと歩くしかないように歩いた】
船のなかでは手紙を書いて星に降りたら歩くしかないように歩いた
【52、村上春樹さんと若山牧水】
でも青がないんだ、と僕は小さな声で言った。そしてそれは僕が好きな色だったのだ。
【53、岩田多佳子さんと世界に味方せよ】
お前と世界のたたかいでは、世界に味方せよ──。
【54、小津夜景さんとぷるんぷるん】
純粋にはなれない。何も捨てることもできない。忘れることもできない。叶うこともない。ぷるんぷるんは切迫する。そしてぷるんぷるんは、たぶん、そのたびごとにがまんができないという。
【55、石部明さんと嘔吐するシン・ゴジラ】
ゴジラは「かがんで蝶を吐」いている。美しいスペクタクルのような蝶を吐きながら、ゴジラは「生きるか死ぬかに関わる痙攣にして闘争」をしている。
【56、雪舟えまさんとゆれるぽるぽる】
きみは何でもできるのにここにいる
【57、西原天気さんとソファー】
これからどんな素晴らしく、くだらなく、崇高で、過激で、だるく、斬新で、陳腐で、軽やかな「身に覚え」のあってないようなことがやってくるのか
【58、田村ゆかりさんと8音】
わたしたちはときどき寝込みながらもいっしょうけんめい生きてきた。
【59、森三中・大島美幸さんと夏井いつきさん】
「なぜわたしではないのです」の世界から「夫は他人なので好き」の世界へ
【60、平岡直子さんとライオン】
そのライオンさえも見つけられなかった者たちがいたこと。それは力に触れ得なかった者たちがひとりふたりさんにんと無力でありながら生きていくための生き延び方についての話。
【61、新海誠さんと小野小町】
世界から忘却されたふたりだけれど、お互いは、光っているから、その〈運動〉によって、それとなく、わかる。わかってしまう。わかってしまった。だから、問いかけた。「君の
【62、舞城王太郎さんと木下龍也さん】
絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶
【63、熊谷冬鼓さんと茹であがるパスタ】
茹であがるパスタ以上でも以下でもない場所にたたずんで未来から次から次へとおとずれる〈あなた〉のことを待っているのだ。ことば、茹でながら。
【64、フラワーしげるさんと柿本人麻呂】
なにを記憶し、なにを忘れようとしたか
【65、リービ英雄さんと言葉の興奮】
わたしは、いま、こうふんしている。
【66、時実新子さんと産もうかな】
きょういちにちをたまたま生きてみよう
【67、小池正博さんと兎カニバリズム】
これからは兎を食べて生きてゆく
【68、俵万智さんと卵サンド】
ともかく、サンドイッチは危機的な食べ物かもしれない。
【69、本多真弓/本多響乃さんとひとを好きになる】
クリスマス前なので「ひとを好きになる」ということについて少し考えてみよう。
【70、吉田戦車さんと萩原さん(仮名)】
つまり、なんなのか。
【71、松岡瑞枝さんとさようなら】
(2016年の最終回) Oh, Mama, can this really be the end もといこんにちは
【72、宮沢賢治さんとキノコ短歌】
新年キノコ始め。私にとってもはじめてのキノコ感想文。キノコをみて泣いているひとがいる。いったい、どうしたのか。そして私は、いったい、どうなるのか。
【73、TVのCMと柄井川柳】
前回はキノコの食べ過ぎでこんらんしてしまい、72回のところを誤って73回と記したが、今回がほんとうの73回である。今は、落ち着いている。
【74、渥美清さんと暗殺】
ローソクをもってみんなが離れてゆく。むほん、だ。
【75、昔昔亭桃太郎さんと石川豚木(ぶたぼく)】
「知能テストです。『夜明け前』を書いた作家は誰ですか」「それは簡単です。2人います。島崎さんと藤村さんです」(私の頭はときどきふわふわしている)
【76、八上桐子さんと時実新子】
なにを見るか、ではなくて、まぶたを閉じた上で、なにを見ないことで・見ようとしたのか。決意したのか。
【77、宝川踊さんと帰らない力士】
すこしだけ笑って、そのまま帰ってこなかった力士。いったい、なにがあったのか。力士のきもちになってかんがえてみた
【78、伊藤左千夫さんと太宰治さん】
元気で行こう。絶望するな。では失敬。
【79、望月裕二郎さんと時をかける少女】
玉川上水水流循環動力生成装置とは、いったいなんなのか
【80、R15指定と悲しいセックス】
「入れたら終わりよ。そういう遊びなんだから」
【81、尾崎放哉さんと捨てる】
「あんたは帰れんよ。帰れる道理がなかろうがさ。これまでだって捨てられんかったんだ。あんたは捨てた気かしらんが。一度捨てたら二度は捨てられんよ」
【82、新宿歌舞伎町俳句一家屍派と北大路翼さん】
あるきつづける。生きるために。生きないために。春の通路を。
【83、筒井祥文さんとやって来た猫】
こんな手をしてると猫が見せに来たわけだが
【84、鳥居さんとなんで】
なんで生きるの。なんで死ぬの。
【85、くんじろうさんとムーミン】
よその家を訪ねるのです。人に会いにいくのです。一日中お喋りをして愉快に騒いで忙しく家から出たり入ったりして薄気味の悪いことなんて考えている暇のない人たちに会いにいくのです
【86、永井一郎さんと声】
私にはナウシカしかありませんでした。どんなセリフもその内容は「ナウシカを守り抜く」ということでした。ミトにとっても私にとっても「ひめさまー」がいちばん重要なセリフでした。
【87、富野由悠季さんと戦争なのよね】
戦線から遠のくと楽観主義が現実に取って代わる。そして最高意思決定の段階では現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けているときは特にそうだ。
【88、丸山進さんと私は変ですか】
あなたから見ても私は変ですか
【89、竹井紫乙さんと痛い】
傷つくと、会える。
【90、堂園昌彦さんと創造されるゆっくり】
わたしたちは〈ゆっくり〉をつくらなければいけない。
【91、加藤知子さんと関悦史さん】
少し、ずるくて、かっこいい者とは。
【92、夏石番矢さんとコカ・コーラ】
内面化とは、それに気づかなくなることなのではないだろうか。ナイこと。内(ナイ)として、気づかないこと。「内面の吸収を抑え、内面の排出を増加」する特定保健用食品コーラ。
【93、ドラマ『相棒』と歌人】
愛は時に人に勇気を与えます。しかし愛は時に人を臆病にもします。/杉下右京
【94、正岡子規さんと田島健一さん】
脳のなかがもうもう、ぼんやり、座ったまま眠るでも覚めているでもない、私が言ったわけでもなくひとが言ったわけでもなく、ただ、カエル、耳に響いてくる、それはもう俳句だった。
【95、うんこ漢字ドリルと現代川柳】
「うんこにも羽が生えたらいいのに」「うん、そうだね」
【96、石田柊馬さんと妖精大戦争】
妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている
【97、大川博幸さんとあやふや】
私はぼんやりした猫である。気づいたときはあやふやだった。ぼんやりしたひとに飼われて、二人で、あやふやな暮らしを送っていた。彼はいつもぼんやり編物をしぼんやり花に水を遣った
【98、谷川俊太郎さんと岡野大嗣さん】
人類は小さな球の上で眠り起きそして働きときどき火星に仲間を欲しがったりする
【99、明恵上人さんとんんんんんんん】 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
【100、目次と100の不思議】
「アイザック・ディーネセンはこう言った。私は、希望もなく絶望もなく、毎日ちょっとずつ書きます、と。いつか私はその言葉を小さなカードに書いて、机の横の壁に貼っておこうと思う」
2016年の〈今〉も、わたしたちの〈すべて〉の関さんは、揺れる。
【2、北大路翼さんと乳輪】
俳句は、乳房に、たどりつけない。
【3、イイダアリコさんとゴジラ】
わたしたちは俳句を通して〈初めてのゴジラ〉や〈初めての乳輪〉に出会う。
【4、松本てふこさんと希望】
語り手は逮捕されるかもしれない。でも、状況はシリアスではなく、「うららか」だ。これから「出頭」をするというのに、ここにはフシギな希望がある。
【5、石原ユキオさんと災難】
ひしめきあったペンギンたちをひとめみてわかるのは、それが〈もふもふ〉しているということである。たぶん、あなたがそこに頭からつっこめば〈もふもふ〉するだろう。わたしも。
【6、関悦史さんとテラベクレル】
語り手はいまや季語をあんのんと使える世界には暮らしていない。季語を使い、季節のなかに身を置こうとすると、〈テラベクレル〉をも抱えこまざるをえない世界。それが語り手が身をおく春である。
【7、中山奈々さんと外傷】
「傷って消すもんじゃないんだよ。生きられるものなんだ」 私は、もっと、床の一部になる。
【8、宮本佳世乃さんと心臓】
ひとりにひとつずつの心臓、ひとりにひとつずつの手、ひとりにひとつずつの足、ひとりにひとつずつの内臓、ひとりにひとつずつの身体、ひとりにひとつずつの身体の《仕組み》。わたしたちの身体は、桜餅のように、驚くほど律儀だ。
【9、佐藤文香さんと恋愛】
恋愛とは〈俳句〉に疎外される〈わたし〉のことだ。
【10、小倉喜郎さんと多忙】
だからこんなふうにも思う。語り手は身体を完成させるために「急」いでいるのかもしれないと。それならば私にもわかる。私もきっとこう言うはずだ。「急がねば」。
【11、榮猿丸さんと抱擁】
今度抱擁するときに少しだけ確かめてみてほしい。いま、〈僕ら/二人〉は〈どこ〉で〈いちゃいちゃ〉し〈抱擁〉しているのかを。
【12、長嶋有さんと不倫】
わたしたちはときどき「すごい不倫」の話をきく。わたしたちは「すごい不倫」のわきでなにげなく買い物をしたり、ブランコに乗ったり、河のほとりでたたずんでおしゃべりをしたり、電車のなかでずっと読みかけのままだった文庫本を読み終えたりする。でも「すごい不倫」はいつもそこここにある。
【13、喪字男さんと混入】
お花見のなかで、語り手は「乳房」からいま・ここの感覚をとらえようとしている。そこでは誰それがいるということが問題になるのではなく、どのような乳房があるかが問題に、なる
【14、久保田紺さんと隙間】
いま、〈大好き〉を通して〈未知〉にであう
【15、なかはられいこさんと回避】
わたしたちは、わたしたちがいつも語ろうとしない〈回避〉のなかに《こそ》、棲みつづけている。
【16、中澤系さんと理解】
「誰もが未来のどこかの地点で、世界から「理解できない人は」と告げられることになる。「下がって」と」
【17、リチャード・ブローティガンさんと俳句】
「森の中をこっそりと動いてゆくオオカミのように、書くということの、ひとりぼっちの道すじをたどりつづける勇気」
【18、野間幸恵さんと水】
たえず〈ここ〉になることのできない〈ここ〉がわたしたちのなかに〈ある〉。水、のような。
【19、米川千嘉子さんと主人公】
どんなに「死のうと思って」も、たえず、歌を、言語を、顔をとおして〈わたし〉に複数性を与えること。もうひとつの生を。どんなに生が行き詰まっても、わたしたちはわたしとわたしの往還をつづける限り、どうにか、なる。
【20、加藤治郎さんと崩壊】
わたしたちは、創造しなければならない。新しい廃墟で。
【21、東直子さんと桜桃忌】
「私の大好きな、よわい、やさしい、さびしい神様。世の中にある生命を、私に教えて下さったのは、あなたです」
【22、泉紅実さんとあんかけ】
ちゃんといちゃいちゃしてみよう。
【23、牛隆佑さんと二人暮らし】
凹凸の少ない町で、凹凸のような突然の「そして」から〈ふたり〉の暮らしは始まった
【24、岡野大嗣さんと祈り】
それは〈きれいな鼻歌〉の、終わりのない、〈とぎれとぎれ〉の、たったひとつの〈長い歌〉としての祈り
【25、木下龍也さんと幽霊】
どれだけ〈わたし〉が死んだとしても、まだやってくる生のたくましさと愛おしさ。「おめめ」、この愛すべきもの。
【26、兵頭全郎さんとポテチ】
意味に負けないよう、燃え尽きないよう、くるくると循環し続けること。無限のポテチ(∞)と共に。
【27、金原まさ子さんとシャウト】
「折檻部屋」を出たり入ったりする。真顔で。すました顔をして。折檻される季語のシャウトを目撃しながら。ああ。世界はなんて〈初めて〉ばかりなんだろう、とおもう。
【28、飯田有子さんとたすけて】
「たすけて」ほしい主体が「たすけて」と叫んでゆくそのプロセスのなかで壊れていく。たすけて
【29、柳谷あゆみさんとマリオ】
たった〈一度〉しか生きられないこと。わたしたちのすごくシンプルな生のリアリズム。
【30、田島健一さんと奥だらけ】
「もはや誰が不審者なのかすらわからない」全方位的に主体が解体される場所。
【31、飯島章友さんと巨眼】
でも誰かはわからない。誰かがいるのはわかるけれど。そして、その誰かと、ときどき、ふっと、眼が、合う。
【32、車谷長吉さんと崖】
「頭の中には崖があるのね?」「そうや、崖があるんや」
【33、川合大祐さんと野比のび太】
のび太とわたしはタンジールの大門で別れた。たしか、わたしたちは「さようなら」もいわなかったように思う
【34、外山一機さんとドラゴンクエスト】
ここは ゆうきをためされる しんでんじゃ。 たとえひとりでも たたかうゆうきが おまえにはあるか?
【35、中家菜津子さんとフェルナンド・ペソア】
あらゆる詩はいつも翌日に書かれる。
【36、吉田類さんとロラン・バルト】
少しでも希望があるのならおまえは行動する。希望はまったくないけれど、それでもなおわたしは……あるいはまた、わたしは断固として選ばぬことを選ぶ。漂流を選ぶ。どこまでも続けるのだ。
【37、北山あさひさんと廃屋】
結婚をひとりでしたい。
【38、瀬戸夏子さんと相思相愛】
「デニーズが消えたとき、どんな感じだった?」「ものすごく光ってた。きらきらしてた」
【39、夢野久作さんと犯罪】
なぜということなしに殺したくなるのです。あとからついて行きたくなるのです。
【40、佐藤りえさんと人外】
「まず最初に幽霊(妖精やら異星人や鶴)という不思議キャラ設定が紹介され、そこから二人の関係性が始まるのがサブカル的「人外」の基本セオリーなのだ」
【41、松尾芭蕉さんとゾンビ】
芭蕉ゾンビは順応するのでも抵抗するのでもない。増殖するにしても生成変化することも進化することも退化することもない。芭蕉ゾンビにはいかなる解決もカタルシスもない
【42、正岡豊さんとまばたき】
つまり、〈終わってしまった〉のではなく、〈はじまってしまった〉こと。それが《ほんとうに》ひとがあきらめることのかたちなのではないか。
【43、石川啄木さんとだらしなさ】
縦の文芸にあらわれる〈だらしない〉横の姿勢の系譜。それはなんなのだろう。
【44、穂村弘さんと魔術】
夢の中では、光ることと喋ることはおなじこと。お会いしましょう
【45、荒木飛呂彦さんと五・七・五】
五・七・五は自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……わたしに勇気を与えてくれる
【46、小坂井大輔さんと三十五歳問題】
芥川龍之介にはおそらくいなかった「死ぬなと往復ビンタしてくる」先生。2016年の35歳は、奇妙に〈ひらかれた場所〉に、いる。
【47、笹井宏之さんとえーえん/永遠】
かつてジャック・ラカンは言った、「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい」
【48、ながや宏高さんと覚悟】
この連作の水は、このわたしに覚悟を要請してくる水だ。境界を越えるのか、越えないのかの、覚悟を。おまえはどうするのか、と。
【49、壇蜜さんと友だちってなんですか】
手放せることが出会いなのかもしれない。なんか、あ、手放していいんだなって。ともだちってなんですかってきかれたら、たぶん、手放せることだなって。
【50、ミムラさんと音のとげ】
短歌は〈音のきもちよさ〉だけでなく〈音のきもちわるさ〉も考えることができるジャンルかもしれない。〈きもちよさ〉だけでなく〈きもちわるさ〉に敏感であるためにはどうしたらよいのか
【51、斉藤斎藤さんと歩くしかないように歩いた】
船のなかでは手紙を書いて星に降りたら歩くしかないように歩いた
【52、村上春樹さんと若山牧水】
でも青がないんだ、と僕は小さな声で言った。そしてそれは僕が好きな色だったのだ。
【53、岩田多佳子さんと世界に味方せよ】
お前と世界のたたかいでは、世界に味方せよ──。
【54、小津夜景さんとぷるんぷるん】
純粋にはなれない。何も捨てることもできない。忘れることもできない。叶うこともない。ぷるんぷるんは切迫する。そしてぷるんぷるんは、たぶん、そのたびごとにがまんができないという。
【55、石部明さんと嘔吐するシン・ゴジラ】
ゴジラは「かがんで蝶を吐」いている。美しいスペクタクルのような蝶を吐きながら、ゴジラは「生きるか死ぬかに関わる痙攣にして闘争」をしている。
【56、雪舟えまさんとゆれるぽるぽる】
きみは何でもできるのにここにいる
【57、西原天気さんとソファー】
これからどんな素晴らしく、くだらなく、崇高で、過激で、だるく、斬新で、陳腐で、軽やかな「身に覚え」のあってないようなことがやってくるのか
【58、田村ゆかりさんと8音】
わたしたちはときどき寝込みながらもいっしょうけんめい生きてきた。
【59、森三中・大島美幸さんと夏井いつきさん】
「なぜわたしではないのです」の世界から「夫は他人なので好き」の世界へ
【60、平岡直子さんとライオン】
そのライオンさえも見つけられなかった者たちがいたこと。それは力に触れ得なかった者たちがひとりふたりさんにんと無力でありながら生きていくための生き延び方についての話。
【61、新海誠さんと小野小町】
世界から忘却されたふたりだけれど、お互いは、光っているから、その〈運動〉によって、それとなく、わかる。わかってしまう。わかってしまった。だから、問いかけた。「君の
【62、舞城王太郎さんと木下龍也さん】
絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶対絶
【63、熊谷冬鼓さんと茹であがるパスタ】
茹であがるパスタ以上でも以下でもない場所にたたずんで未来から次から次へとおとずれる〈あなた〉のことを待っているのだ。ことば、茹でながら。
【64、フラワーしげるさんと柿本人麻呂】
なにを記憶し、なにを忘れようとしたか
【65、リービ英雄さんと言葉の興奮】
わたしは、いま、こうふんしている。
【66、時実新子さんと産もうかな】
きょういちにちをたまたま生きてみよう
【67、小池正博さんと兎カニバリズム】
これからは兎を食べて生きてゆく
【68、俵万智さんと卵サンド】
ともかく、サンドイッチは危機的な食べ物かもしれない。
【69、本多真弓/本多響乃さんとひとを好きになる】
クリスマス前なので「ひとを好きになる」ということについて少し考えてみよう。
【70、吉田戦車さんと萩原さん(仮名)】
つまり、なんなのか。
【71、松岡瑞枝さんとさようなら】
(2016年の最終回) Oh, Mama, can this really be the end もといこんにちは
【72、宮沢賢治さんとキノコ短歌】
新年キノコ始め。私にとってもはじめてのキノコ感想文。キノコをみて泣いているひとがいる。いったい、どうしたのか。そして私は、いったい、どうなるのか。
【73、TVのCMと柄井川柳】
前回はキノコの食べ過ぎでこんらんしてしまい、72回のところを誤って73回と記したが、今回がほんとうの73回である。今は、落ち着いている。
【74、渥美清さんと暗殺】
ローソクをもってみんなが離れてゆく。むほん、だ。
【75、昔昔亭桃太郎さんと石川豚木(ぶたぼく)】
「知能テストです。『夜明け前』を書いた作家は誰ですか」「それは簡単です。2人います。島崎さんと藤村さんです」(私の頭はときどきふわふわしている)
【76、八上桐子さんと時実新子】
なにを見るか、ではなくて、まぶたを閉じた上で、なにを見ないことで・見ようとしたのか。決意したのか。
【77、宝川踊さんと帰らない力士】
すこしだけ笑って、そのまま帰ってこなかった力士。いったい、なにがあったのか。力士のきもちになってかんがえてみた
【78、伊藤左千夫さんと太宰治さん】
元気で行こう。絶望するな。では失敬。
【79、望月裕二郎さんと時をかける少女】
玉川上水水流循環動力生成装置とは、いったいなんなのか
【80、R15指定と悲しいセックス】
「入れたら終わりよ。そういう遊びなんだから」
【81、尾崎放哉さんと捨てる】
「あんたは帰れんよ。帰れる道理がなかろうがさ。これまでだって捨てられんかったんだ。あんたは捨てた気かしらんが。一度捨てたら二度は捨てられんよ」
【82、新宿歌舞伎町俳句一家屍派と北大路翼さん】
あるきつづける。生きるために。生きないために。春の通路を。
【83、筒井祥文さんとやって来た猫】
こんな手をしてると猫が見せに来たわけだが
【84、鳥居さんとなんで】
なんで生きるの。なんで死ぬの。
【85、くんじろうさんとムーミン】
よその家を訪ねるのです。人に会いにいくのです。一日中お喋りをして愉快に騒いで忙しく家から出たり入ったりして薄気味の悪いことなんて考えている暇のない人たちに会いにいくのです
【86、永井一郎さんと声】
私にはナウシカしかありませんでした。どんなセリフもその内容は「ナウシカを守り抜く」ということでした。ミトにとっても私にとっても「ひめさまー」がいちばん重要なセリフでした。
【87、富野由悠季さんと戦争なのよね】
戦線から遠のくと楽観主義が現実に取って代わる。そして最高意思決定の段階では現実なるものはしばしば存在しない。戦争に負けているときは特にそうだ。
【88、丸山進さんと私は変ですか】
あなたから見ても私は変ですか
【89、竹井紫乙さんと痛い】
傷つくと、会える。
【90、堂園昌彦さんと創造されるゆっくり】
わたしたちは〈ゆっくり〉をつくらなければいけない。
【91、加藤知子さんと関悦史さん】
少し、ずるくて、かっこいい者とは。
【92、夏石番矢さんとコカ・コーラ】
内面化とは、それに気づかなくなることなのではないだろうか。ナイこと。内(ナイ)として、気づかないこと。「内面の吸収を抑え、内面の排出を増加」する特定保健用食品コーラ。
【93、ドラマ『相棒』と歌人】
愛は時に人に勇気を与えます。しかし愛は時に人を臆病にもします。/杉下右京
【94、正岡子規さんと田島健一さん】
脳のなかがもうもう、ぼんやり、座ったまま眠るでも覚めているでもない、私が言ったわけでもなくひとが言ったわけでもなく、ただ、カエル、耳に響いてくる、それはもう俳句だった。
【95、うんこ漢字ドリルと現代川柳】
「うんこにも羽が生えたらいいのに」「うん、そうだね」
【96、石田柊馬さんと妖精大戦争】
妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている妖精は酢豚に似ている絶対似ている
【97、大川博幸さんとあやふや】
私はぼんやりした猫である。気づいたときはあやふやだった。ぼんやりしたひとに飼われて、二人で、あやふやな暮らしを送っていた。彼はいつもぼんやり編物をしぼんやり花に水を遣った
【98、谷川俊太郎さんと岡野大嗣さん】
人類は小さな球の上で眠り起きそして働きときどき火星に仲間を欲しがったりする
【99、明恵上人さんとんんんんんんん】 ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
【100、目次と100の不思議】
「アイザック・ディーネセンはこう言った。私は、希望もなく絶望もなく、毎日ちょっとずつ書きます、と。いつか私はその言葉を小さなカードに書いて、机の横の壁に貼っておこうと思う」
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