およそ日刊「俳句新空間」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
2014年10月20日月曜日
今日の小川軽舟 12 / 竹岡一郎
秋の蝶磐石に鈴振る如し 「近所」
秋の蝶であるから、冬蝶ほど弱っていないにせよ、もう静かなのだ。何度か翅をはためかせる、その無音の動きを、作者は音として感じた。それほどまでに静寂は満ちているのである。鈴として感じたのだから、蝶の翅はまだ凛として天を指すのだ。
この句の眼目は、実は蝶でも鈴でもなく、磐石である。蝶が主旋律を表わすなら、磐石はその旋律を支える通奏低音である。神の如く冷たく静かな磐石の上で、蝶の儚い小さな動きは鈴として煌めくのである。平成三年作。
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