白梅や水匂う夜の飛行服 須藤徹
たとえば夜間飛行。飛行機に乗っている間、機内は今日でも昨日でもない不思議な時空を旅する空間となる。眼下に見える街の灯りがどんどん遠ざかり、遠い地平線が消えて、 ふかぶかとした夜の闇に心を休める…夜の静寂(しじま)の…なんと饒舌…な…ことでしょう…ジェットストリーム…(FM東京長寿番組)。
そして、梅が咲く頃は、地球を意識する。寒い季節に咲く小さく丸い花びらからの形からだろうか、梅は、人を戸外へといざなう。季節が移る=地球の自転、を意識するからだろう。空の香に水の香があるように…作者はグラスを傾けながら酔いしれているのである。 大人の男の冒険心とロマチシズムが漂う。
<『幻想録』邑書林1995年所収>