2014年12月25日木曜日

身体をよむ 4 [桂信子] 今泉礼奈


生きもののすれ違ふ眼や冬霞  桂信子

ライオンなど、激しい動物が互いに睨み合ってすれ違う、戦いの前を思った。しかし、私たちも「生きもの」のひとつである。すれ違うときに、いつも、睨み合っているわけではない。(というか、睨むことなんてめったにない。)すれ違う相手をチラっと見たり、見なかったり。その程度である。そして、また、他の生きものもそうであろう。水族館に行くと、魚なんてみんなそんな感じである。

他の生きものを見て、自分を思った。
今、私の眼はどんな眼をしているのだろう。

冬霞がすこしあたたかく、やわらかく、生きものの世界を包む。

(『新緑』1974年所収)