2015年4月4日土曜日

貯金箱を割る日 24[ひで] / 仮屋賢一



点三つ並べれば顔万愚節  ひで

 異なる3点が決まれば、平面が決定する。異なる3点が決まれば、円が決定する。異なる3点が決まれば、放物線が決定する。異なる3点が決まれば、顔が決定する。
∵シミュラクラ現象

 「決定する」は言い過ぎだが、確かに「∵」は顔に見える。一度顔に見えたら、「∵」の本来の意味すら吹き飛んでしまうくらい、強烈だ。ボウリングの球の指を入れる穴が顔に見える、といった経験がある人も多いだろう。「人間の顔をした埴輪の絵を描け」と言ったら、多くのうろ覚えの人は、適当な輪郭に丸を三つ書くだろう。なんとも滑稽な顔が出来上がる。ほんとうは、顔には目と口以外に、鼻をはじめとして点で表せそうなものはいっぱいあるんだけれども、顔を表すには点三つで十分だ、なんていう人間の認識の不思議な部分がある。こういった、大きな発見を言っているようで、実は大したことのない、というよりナンセンスなようで、という絶妙な塩梅の事実の呈示が、「万愚節」という言葉と調度良く響き合っているのではないかな、と思う。「エイプリルフール」よりも、「四月馬鹿」よりも、「万愚節」って少し知的な滑稽さがある気がする。

 点三つ並べれば顔なんだけれども、そうやって出来た顔は誰の顔でもない。

∵そんな人、どこにもいないんだから。

《出典:『万愚節の結果発表|俳句ポスト365』(2015年4月5日閲覧)》