湾岸に倉庫のごつた春霞 辻本敬之
そんなに言うほど湾岸に倉庫ってごった返していたっけ、倉庫って存外綺麗に並んで建てられているものじゃないかな、なんて思ってたら、春霞。遠くから見遣っているのか。なるほどなあ。
湾岸の倉庫なんて言われたら、ものすごく無機質な感じがするんだけれども、霞の世界の中ではそういう素っ気なさは薄れる。あの倉庫にあるものは、これから世界に輸出されてゆくのかな、とか、巡り巡って自分の手元にもやってきたりするのかな、とか。倉庫ってのも、世界の一部で、いかにも人工物っぽくて湾岸に追いやられている感じがするけど、すごく広い意味で捉えたら自然の一部なんだな、なんて。ほんとうは大してごった返している感じじゃないんだけれども、「ごつた」って感じもしてくる気がする。
霞って、ぼやけて見えにくくするくせに、物の先入観をかき消して本質に到達することが出来そうな、そんな幻想さえ持たせてくれる。